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アナザーワールド
第159話
しおりを挟む川の向こうにある山沿いに、ポツンと建っている家が見えた。
千冬の家だ。
ここらへんは電灯もろくに立っていないから、千冬の家は灯台のように明るい。
俺ん家は住宅地の中にある。
だから家もたくさんあるし、何なら、自販機だって近くにある。
でも千冬の家は別だ。
目と鼻の先と言っても、住宅地を抜けた先の荒野にあるから、周りに何も無い。
川のせせらぎも、雑木林の揺れる風の音も、耳を澄ませれば、すぐ近くに聴こえる。
「なあ」
「あん?」
不思議な感じがした。
彼女が誰であれ、こうして“誰か”と、この道を歩いていることが。
「…いや、何もない」
家に着いて、さや姉が出迎えてくれた。
さっきの電話は何だったのかと問われたが、うまく答えられなかった。
代わりに千冬が説明してくれて、その場はことなきを得た。
とは言っても、さや姉に聞きたいことが山ほどあった。
病院のこと、千冬のこと。
何から聞けばいいかもわからないくらい。
「とりあえず部屋行くで!」
無理やり手を引っ張られ、千冬の部屋に直行する。
バタンッ!
と、勢いよく閉まるドア。
電気をつけ、カーテンを閉めた。
「着席せぇ!」
「お、おう」
床に座らされ、待機させられた。
千冬は何かを漁ってるようだった。
机の中に本棚、クローゼットの中まで。
正座しながら、部屋の中をぐるっと見渡した。
懐かしい、彼女の部屋を。
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