雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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夕暮れと影

第153話

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 “そんなわけない”って、何度も思った。

 千冬が目の前にいる。

 そんな「非現実的」なことが、起こってるわけない。

 言い聞かせるように何度も、…何度も

 
 この前女が言ってた。

 「世界」には、色んな“パターン”があるって。

 だから、自分が今いるこの世界の他に、違った可能性の世界が、存在している。

 “並行世界”

 漫画とかで目にするような、とんでもワード。

 そんな非日常的な“ワード”を不意に思い出したのは、思いもよらない可能性が、頭の中をよぎったからだ。

 子供の頃の「夢」だった。


 ——あの日千冬が海に行かなければ、世界はどうなっていたんだろう?


 ありふれていて、…それでも、確かな「夢」。

 甲子園に行けば、きっとまた会えるかもしれない。

 ベットから飛び起きて、サイレンの鳴るグラウンドの上で、マウンドに立つアイツが…
 


 想像でしかないと思ってた。

 想像の中でしか、叶えられないと思ってた。

 “もしも世界が違ったら”?

 そんなバカげたことが、現実に訪れるはずはなかった。

 千冬はあの日いなくなった。

 それは間違いないんだ。

 どれだけ季節が変わろうが、——どれだけ、長い時間が過ぎようが。
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