雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

文字の大きさ
上 下
153 / 394
夕暮れと影

第151話

しおりを挟む

 考えても埒が明かなかった。

 何か言えばへんな目で見られるし、会話は一向に成立しないし。

 自分の身に起こってる“異常事態”は、財布を落としたとかカバンを無くしたとかで焦るようなレベルになかった。

 突然目の前の世界が変わった。

 …そんなこと、夢の中だってそうそう無い。

 無いはずなのに…


 スマホを開いた。

 とくに理由はなかった。

 ただ彼女が、「ライン」のやり取りを見ろって言うから、仕方なく。

 昨日も、一昨日も、俺たちはやり取りしてた。

 それだけじゃない。

 ラインの連絡先に、俺の知っている人たちがいなかった。

 代わりに、名前も聞いたことがない奴らがいた。

 正体不明のグループだって存在した。

 「同期専用」とか「神戸高野球部」とか。

 何より目を疑ったのは、千冬のニックネームだ。

 小学生の頃から変わってない。

 ひらがなで書かれた、“ちふゆ“の文字。

 昔の名前のまま、それがスマホの中にあった。

 アイコンが変わった、たった1つのアカウントが。

 小学生の時に途切れたトークは、もう残ってなかった。

 どれだけスクロールしても見つからなかった。

 ずっと残してたんだ。

 スマホの中に。

 更新されていない、最後のラインのやり取りを。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真夏のサイレン

平木明日香
青春
戦地へ向かう1人の青年は、18歳の歳に空軍に入隊したばかりの若者だった。 彼には「夢」があった。 真夏のグラウンドに鳴いたサイレン。 飛行機雲の彼方に見た、青の群像。 空に飛び立った彼は、靄に沈む世界の岸辺で、1人の少女と出会う。 彼女は彼が出会うべき「運命の人」だった。 水平線の海の向こうに、「霧の世界」と呼ばれる場所がある。 未来と過去を結ぶその時空の揺らぎの彼方に、2人が見たものとは——?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

彼女は多分、僕の書く小説にしか興味が無い

御厨カイト
青春
僕の隣の席の小池さんは有難い事に数少ない僕の書く小説のファンだ。逆を言えばそんな彼女は僕の書く小説にしか興味が無いのだろう。だけど僕は何だかその関係性が好きだ。これはそんな僕らの日常の1コマである。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

処理中です...