雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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ここは…?

第140話

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 「ちょっ、怖いって!」


 やっぱり、…ある


 …でも、なんで?


 呆気に取られたまま、彼女を見た。

 透き通った肌。

 ふんわり柔らかい、ボーイッシュな髪型。

 目の前の女子高生が誰かを、必死で理解しようとした。

 だけど、そんなはずが…


 「千冬…なのか?」


 その言葉が何を意味するかを理解できないまま、勢いのままにぶつけた。

 気がついたら外に出てた。

 「千冬」って、その“名前“が。


 彼女は不気味そうに俺の方を見た。

 顔が引きつってるようにも見えた。

 でも、訳がわからないのはこっちの方なんだ。

 そんな顔をされても困るし、なんなら、今すぐに説明してほしいくらいだった。

 ”説明”っていうか、状況の整理というか。


 「そうやけど」と、素っ気なく言ってきた。

 だからもう一度尋ねた。

 “本当に千冬なのか”、と。

 彼女はただ頷いて、それがどうかしたのか?と聞いてきた。

 …どうもこうも、そんな嘘みたいなことが…


 「証拠は?」

 「証拠ぉ!?」


 びっくりした声をして、彼女はさらに後退る。

 証拠というかなんというか、とにかく信じられなかった。

 だから、尋ねるしかなかったんだ。

 彼女が“誰”で、何者であるかを。


 考え込んだように腕を組み、俺を一瞥して、「ふざけてる?」と神妙な面持ちで聞いてきた。

 ふざけてない。

 一切。

 むしろ、それはこっちのセリフだと言いたかった。

 そんなわけないと首を振ると、しつこいくらいに突っ込んできた。


 「じゃあなんやねん」

 「…真剣に聞いとんやけど?」

 「記憶喪失にでもなったんか」

 「そんなわけないやろ」

 「さっきまで普通に会話しとったやんけ。怖いであんた」

 「…さっきまで?」

 「大体、練習しようって言ってきたのはあんたなんやし」

 「練習?」

 「打撃練習や!フォーム確かめたいって言うたやんけ」

 「…???」


 打撃練習?

 フォーム??


 やばい、ますますわからない。

 だって俺はさっきまで女といたんだ。

 電車に乗って、目を瞑ってとか言われて…

 何をどう説明すればいいかも分からず、彼女が話す内容についてすらいけずにいると、しまいに大きなため息をつかれた。

 ハァッ、と、呆れ顔をされたまま、もうええから行くでと、強制的に会話を切り上げられ。
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