雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

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ここは…?

第137話

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 「あんた、さっきからおかしいで?」


 …おかしい?


 …俺が?



 覚束ない視点。

 目の前に迫ってくる、騒音にも近いノイズ。

 疑問に思う暇もないまま、近づいてくる感情があった。

 だけどその“感情”がどこからきているのかも、はっきりと辿ることはできなかった。

 ただ、咄嗟に首を振る自分がいた。

 その所作の先端に触れる“時間”も、思うように追えないまま。



 「…あり得ないだろ」


 俺がおかしいわけないじゃないか。

 「桐崎千冬」だって…?

 誰が?

 自分の心に反芻するように考えた。

 でも、何度考えても同じだった。

 単純なことだとさえ思えた。

 こんなのは現実じゃない。

 “あり得ない”

 って、何度も



 女子高生は呆然とする俺の手を引っ張り、駅の外に出た。

 なすがままにされた俺は、彼女の視線や仕草を必死で追いかけた。

 袖の下に見えている黒色のアンダーシャツが、軽やかな彼女の足取りの上に映えていた。

 きっと、運動が得意なんだろうと思う。

 エナメル製のボストンバックも。

 ナイキのスニーカーも。

 女っ気のない言葉遣いが、予期していない角度からぶつかってくる。

 それは意識の内側に渦巻く膨大な情報量となって、津波のように押し寄せてきた。

 千冬の声色や“らしさ”が、忘れていた記憶の“外側”から、風に乗って流れてくるように。
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