雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

文字の大きさ
上 下
126 / 394
ここは…?

第124話

しおりを挟む









……………………………………………………

…………………………

……………
……


ミーンミンミンミンミン


ジジジジジジ…




 蝉の声が聞こえる。

 学校が終わった後女に連れられ、須磨駅から阪神線の電車に乗った。

 どこに行くんだと尋ねたら、“ここじゃないどこか”、そう言うだけだった。


 電車の行き交う海のほとりで、夕暮れ時の空の色が、街の向こう側へと続いている。

 ホームを抜けた先の線路の色は、いつもよりも少し、赤茶けていた。

 レールの揺れる音が聞こえて、「2番線に電車が到着します」のアナウンス。

 明石海峡大橋を背に、須磨浦海岸の水際を駆け抜けてくるオレンジ色の機体が、さざ波の湾曲に乗り上げるように近づいてきた。

 午後の静けさが段々と加速しながら、それでいて街の喧騒がいっそう近くなる。

 光と波がぶつかるその瀬戸際を追いかけながら、ぐうっと、水飛沫が加速した。

 街が息を吸っていた。

 ガトンゴトンと、駅のホームに通り過ぎる風の気配を、軋ませながら。


 女は、“駅は絶好の場所だ”と言っていた。

 もちろん意味はわからない。

 切符は“三ノ宮行き”だった。

 ——三ノ宮に何かあるのか?

 だけど、その“答え”は、すごく曖昧だった。


 「電車に乗ったら、目を閉じて」


 目を閉じる?

 乗って…から?

 これから何が始まるのか、想像もできなかった。

 けれど普通じゃないことが起きる。

 そんな予感はしてた。


 「せーのでジャンプする」

 「へ!?」

 「あんたは目を瞑っとくだけでいい」


 お…おう。

 わかった。

 電車が着き、開いたドア。

 俺たちはその向こうに足を踏み入れた。

 そして、女に言われた通り、俺は目を閉じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真夏のサイレン

平木明日香
青春
戦地へ向かう1人の青年は、18歳の歳に空軍に入隊したばかりの若者だった。 彼には「夢」があった。 真夏のグラウンドに鳴いたサイレン。 飛行機雲の彼方に見た、青の群像。 空に飛び立った彼は、靄に沈む世界の岸辺で、1人の少女と出会う。 彼女は彼が出会うべき「運命の人」だった。 水平線の海の向こうに、「霧の世界」と呼ばれる場所がある。 未来と過去を結ぶその時空の揺らぎの彼方に、2人が見たものとは——?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

彼女は多分、僕の書く小説にしか興味が無い

御厨カイト
青春
僕の隣の席の小池さんは有難い事に数少ない僕の書く小説のファンだ。逆を言えばそんな彼女は僕の書く小説にしか興味が無いのだろう。だけど僕は何だかその関係性が好きだ。これはそんな僕らの日常の1コマである。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

処理中です...