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というわけで
第102話
しおりを挟むおー!と、掛け声を上げ、俺以外の連中は全員やる気になっていた。
多分、理解していない。
女の言ってることも、甲子園出場の難しさも。
大ちゃんは笑ってた。
「面白いやつが入ったな」って。
生憎そんな余裕のコメントを出せるほど、俺は心が広くなかった。
だって甲子園なんて目指せるわけねーし
「まあまあ、別にそんな難しく考えなくてもよくね?」
「難しく考えるやろ?アイツ、入って早々俺たちを“指導する”とか抜かしとるんやぞ!?」
「でも、1番うまいし」
「うまいけど…」
「それに、楽しければいいやん?亮が言うように甲子園は無理かもしれんけど、ダラダラ部活するよりはええやろ?」
「ええ!?」
「実はな、せっかくみんなで練習するなら、少しくらいピリッとしてもええと思っとったんや。他の奴らは知らんけど、俺ら、元々キツい練習してきたやろ?」
「まあ、…な」
「キャッチボールして、好きなようにロンTして、それも楽しいけど、もっとこう、「頑張る」って言うかさ」
「諦めた奴が何言うとんねん…」
「それはお前もやろ(笑)」
「うっせぇ」
マネージャーの声が聞こえて、デレデレしている健太。
祐輔は女のノックにノリノリで対応してた。
ツバサは、なんだかんだ楽しそうだ。
岡っちは最初戸惑ってるようだったが、グラブ捌きとか色々アドバイスを受けて、少しずつ女のテンションについて行き始めていた。
気がつけば、ムードがガラッと変わっていた。
グラウンドに響き渡る大きい声と、真剣な表情。
ちょっとでもだるそうにしてたら、ポンと背中を叩いてくる。
有り余る元気。
垢抜けた笑顔。
最初は違和感マックスだったが、それもこれも全部、勢いでかき消されてしまった。
遠慮なんてないんだ。
つい先週まで俺たちだけで楽しくやってたのに、あっという間にテリトリーに入ってきては、ゲラゲラ笑ったり、テンポよく突っ込んできたり。
自分が女子なんて関係ないと言わんばかりに、気軽にスキンシップを取ってくる。
まるで“台風”だった。
とんでもない強さで風を巻き散らし、それまでのしきたりなんてなかったかのように破壊していく。
そのくせ、ガシッとチームメイトの心を掴んでた。
持ち前のトーク力と、明るさで。
入部して2日目だとは思えないほど、女はチームの中に溶け込んでいた。
練習が終わる頃には、すっかり全員と意気投合していた。
明日も頑張るぞ!とか、汗かきながら言うことなんて、今までなかったのに。
俺は納得してなかった。
色々理由はあったが、まあ、とりあえず。
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