雨上がりに僕らは駆けていく Part2

平木明日香

文字の大きさ
上 下
99 / 394
というわけで

第97話

しおりを挟む

 「今日からバシバシいくで!」


 俺たちは皆ポカンとしてた。

 部室に掲げられた1枚の横断幕。

 でかでかと書き出された文字。

 野球部なら、その「文字」は目を疑うほどにインパクト大だった。

 高校野球に携わる人間なら、一度は考えたことがある言葉。

 それは、掲げるべき“目標”でもあった。

 真面目に頑張ろうと思うなら、尚更。


 『目指せ 甲子園』


 だが、それがいかに場違いな「文字」であるかを、全員が理解してた。

 昔は考えてさ。

 甲子園に行ける高校に入って、いつか甲子園に行ってやるんだって。

 この前女と話したように、千冬の代わりに、あの舞台に立とうと思ってた。

 でも今は違う。

 なんのために野球部を立ち上げたと思ってる?

 なんで、皆と楽しんでるかわかるか?

 「甲子園」なんて行けるわけないじゃないか。

 目指せるはずもないし、目指そうとも思ってない。

 それなのに女は、当たり前のように「甲子園」という言葉を使う。

 そりゃ目指せるもんなら目指したい。

 将来的には公式戦にだって出たいし、どうせやるなら、1勝や2勝はしたいだろう。

 だけど「甲子園」となると話が変わる。

 まともな野球経験者がいないこの部じゃ、どんな奇跡が起こったってそこに辿り着くことはできないだろう。

 まぐれじゃ勝ち進めないんだ。

 練習量も、人数も、何もかも違うんだから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真夏のサイレン

平木明日香
青春
戦地へ向かう1人の青年は、18歳の歳に空軍に入隊したばかりの若者だった。 彼には「夢」があった。 真夏のグラウンドに鳴いたサイレン。 飛行機雲の彼方に見た、青の群像。 空に飛び立った彼は、靄に沈む世界の岸辺で、1人の少女と出会う。 彼女は彼が出会うべき「運命の人」だった。 水平線の海の向こうに、「霧の世界」と呼ばれる場所がある。 未来と過去を結ぶその時空の揺らぎの彼方に、2人が見たものとは——?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。

ながしょー
青春
 ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。  このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

彼女は多分、僕の書く小説にしか興味が無い

御厨カイト
青春
僕の隣の席の小池さんは有難い事に数少ない僕の書く小説のファンだ。逆を言えばそんな彼女は僕の書く小説にしか興味が無いのだろう。だけど僕は何だかその関係性が好きだ。これはそんな僕らの日常の1コマである。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...