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新入部員
第62話
しおりを挟むよし!
サッと汗でも流すかねぇ
ジャージに着替え、運動靴に履き替えた。
ちなみにユニフォームなんてものはない。
高いし、この時期は半袖Tシャツの方が動きやすい。
メンバーもまだ揃っていないから、作っていなかった。
作っても、まだ試合ができないからだ。
顧問は一応、名義上はいる。
体育の岩崎。
でも、あくまで名義上。
そうしないと作れないって言われたから、無理言ってお願いしただけだ。
練習には顔は出さない。
逆に出されても困るけどね。
岩崎はバレー部の顧問も兼任してた。
だから基本は体育館にいる。
たまーに、グラウンドに出てきてるけど。
今日のキャッチボールの相手はツバサだ。
いい加減正しい投げ方で投げろって言うんだけど、直らなくて困っている。
元テニス部だから運動神経は悪くはない。
けど、ちょっと変なクセがある。
投げる時も打つ時も。
「相変わらずダサいな投げ方」
「うっせぇ!」
ツバサとは、ひょんなとこから仲良くなった。
バスで通学した日だ。
その日は雨が降ってて、歩くのがめんどくさかった。
バスを使えば、学校の近くまで行ける。
そこまでは良かった。
が、朝から小銭をばら撒いてしまったんだ。
後ろがつかえてるから早く出そうと思って財布のチャックを全開にしたら、バラバラっと。
やっちまったぁぁ
と思ってたら、後ろにいたやつが一緒に拾ってくれた。
いかにも優等生気質な見た目に、ヌッと伸びた身長。
ニューバランスのローテクスニーカーが印象的だった。
手首まで伸びた紺色のニットカーディガンを捲り、ハイ、と、かき集めた小銭を渡してきては、キメ整った眉毛をクイっと持ち上げてきた。
「足りる?」というような顔で。
俺が女だったら、まず間違いなく惚れていただろう。
イケメン度で言えば祐輔に軍配が上がるが、おかげですげぇ助かったし。
そっからだ。
色々話すようになったのは。
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