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甲子園
第46話
しおりを挟む「私、この道好きなんよ」
「…へえ」
そういえば、この近くに家があるって言ってたな。
どこらへんなんだ?
もしかしたら、通ったことがあるかも?
「桜木町ってとこ」
「それは昨日聞いた」
「あんたん家からすぐ近くやで?」
「地区の名前はあんま知らんねん」
一応、須磨にも色んな地名がある。
潮見台だったり月見山だったり。
いまだに地名と場所が一致しないが。
で、その桜木町ってのは?
「あそこ」
田んぼが続く山沿いを抜けると、全国チェーンのレストランが見えた。
背の低いマンションに、点々と立ち並ぶ一軒家。
どこでもありそうな場所だ。
目印らしい目印は何もなくて、人通りも少ない。
もう少し進めば商店街もあるが、まあ、大して目新しいものもないし。
「あの路地に入って」
ガソスタの横を通り、細い道に入った。
大通りを通ったことはあるが、路地の中に入ったことはなかった。
でもよく考えたら、丘の上から見下ろせる場所だ。
俺ん家はすぐそこにある。
すぐって言っても、自転車で15分はかかるけど。
「私ん家に寄るから」
…いや、寄るとかじゃなくて、そのままお帰りになってください?
てか、その前に弁明しろよ。
おかんに勘違いされたままなんだけど。
「電気通っとらんから、早く」
「え、なんで…?」
「もう住んどらんのや。誰も」
…言ってる意味がわからない。
住んでない?!
なぜ??
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