プリンセスは殺し屋

平木明日香

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殺し屋稼業

第84話

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 ——黒の弾道(ディメンション)


 攻撃が壁に弾かれるや否や、怪物はエネルギーを左手に集中させた。

 黒い渦が手のひらに集まり、収縮する。

 腕は低い位置に保たれている。

 肘を持ち上げるように後ろに引き、左半身は一歩後ろへ。

 重心は流動的に動いていた。

 攻撃が弾かれたことによるバックステップ。

 体の中心は内側に回転している。

 回転し、予備動作への“距離“を取っている。

 エネルギーが一点に収縮した後、それが前方へと押し出されるように“膨張”した。

 開いた掌が、壁を押し込むように向かってきた。


 ブーニベルゼが防御姿勢を取らない理由。

 その明白な「理由」を、いまだ掴めずにいた。

 戦いの鉄則は、常に剣が届く間合いの“内側”にある。

 防御を取るための位置どりは基本中の基本だ。

 「防御」は一種の攻撃手段でもあり、また、次の動作への布石でもある。

 防御が必要ない瞬間などどこにも無い。

 少なくとも、俺はそう理解している。

 それなのに…



 
 
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