プリンセスは殺し屋

平木明日香

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世界最強になるために

第43話

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 ヒュンッ


 鞭のようにしなる剣先。

 呼吸の中に伸縮する影。


 捉えた。


 その「感覚」に偽りはなかった。

 ガラ空きだった敵の右腕に被さる軌道。

 その「線」の内側に触れる確かな“感触“が、グッと手の平に滑り込んでくるのがわかった。

 竹刀が届く距離は、相手の竹刀が届く距離でもある。

 不用意に近づく事は、自分の体を晒してしまうことにも繋がる。

 わかっていた。

 相手の動き。

 視線。

 空間と時間の中心で揺れている互いの位置。

 危険は承知だったんだ。

 それを認識できていないわけじゃなかった。

 問題は、——そう、踏み込めるかどうか。

 そのタイミングを、誰よりも理解している自信があった。



 スッ


 …なっ


 捉えたはずの軌道線上に、「感触」が無い。

 先端はすでに届く距離にあった。

 踏み込んだ足の先で、確かに届いた“鋒“があった。

 見間違えるはずはなかった。

 それは俺の「経験」が物語っていた。

 ——確かな、感覚が。
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