COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

星の使徒

第２９６話

　「んじゃ、お先に」


　アイリーンはそう言うと、屋根の上を飛び出した。

　勢いよく後ろ足を蹴り、地面に向かってダイブする。



　バシュッ——！



　豪快な着地。

　垂直に突進するように、頭を下にしていた。

　着地の間際にヒュンッと体を回転させ、体勢を整える。

　回転し、両足を地面につけると同時に、膝を利用して衝撃を和らげていた。

　グンッと地面が凹む。

　担いだ鎌が上下に揺れる。

　煙のように立ち上がった砂埃を払い、ギラついた瞳を前へと向ける。


　「さーって、おっ始めるかね」


　後ろ髪が靡く。

　鎌は担いだままだった。

　不敵な笑みを浮かべつつ、夜月たちの元へと歩み寄る。


　「…くッ」


　足や手を掴んでいる植物は、ただの植物ではなかった。

　強靭で、きめ細やかな繊維が奥深くまで絡み合っていた。

　ツルにしては太く、木の幹にしては柔らかい。

　繊維の色は紫色だった。

　いくつかのトーンが組み合わさっているような配色だったが、その色合いは植物にしては毒々しかった。

　造形そのものは植物の「それ」であるが、それ以上の“異質さ”が随所に際立っていた。

　折り曲げられない紙のようだった。

　形容するならば、物体であって物体でないもの。

　青と赤が共存しているもの。

　そういう印象だろうか？

　植物にしてはあまりにも不自然な見た目が、繊維の表層に染み込んでいた。

　近くで見れば見るほど、それは顕著だった。

　振りほどこうとしたが振りほどけない。

　夜月は植物の中に電気を流し込む。

　内側から灼き切る。

　植物は「導体」だ。

　導体に電流を流したときに生じる熱を使って、繊維の中を溶かす。

　一部でも溶かし切れば、拘束を解くための足がかりになる。

　他のメンバーも同様の考えを持っていた。

　真琴に関しては、自らの炎を外部へと放出し、手や足に巻き付いている蔓を焼き払おうとしていた。