COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２９０話

　シュウウウウウウ——



　ガラガラッと、天守閣の土台にある石垣が崩れていく。

　土埃が舞いながら、爆風半径にあった城内の構造物はことごとく破壊されていた。

　周辺にあった木々の一部は燃えていた。

　フレア・ショットの残火が、焦げ臭い匂いを立てながら揺れていた。

　ゆらゆらとたなびく木の葉と、——影。

　静寂が倒れるように“落ちて”きていた。

　染み渡るゆったりとした時間の流れが、垂直に覆い被さるように降ってきていた。

　その輪郭は急激でありながら、僅かな膨らみさえも含んでいる。

　真琴は息を吐く。

　弓を下ろしながら、ゼーゼーと肩を揺らす。

　直前まで息を止めていた。

　天使は人間と違って微細なエーテル粒子を肺に取り入れながら戦うが、肺の運動とその循環機能における肉体的な構造は、人間の肉体的な仕組みや構造と基本的には変わらない。

　
　(…やった)


　真琴は手応えを感じていた。

　テンション数「４」の攻撃を、理想的な形でぶつけられた。

　変わり果てた周辺の景色が物語っているように、その威力は凄まじかった。

　対象となる範囲が小さければ小さいほど、単位面積あたりに与えられるダメージは上昇する。

　夜月のサポートがあったからこそ、テンションによって付与したエネルギーを極限まで損失しないことができた。

　敵は気を失っていた。

　それほどの強い衝撃が、「1カ所」に集中していた。

　安堵の表情を浮かべていたのは彼女だけではない。

　夜月に勝るとも劣らない「サポート」をしていた人物が1人いる。

　“深雪”だ。