COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２８９話

　ゴォォォォォ



　天守閣の周りの地形が、波打つように崩れていく。

　キョウカの氷で覆われていた天守閣の屋根や壁も、勢いよく燃え広がる真琴の炎によって少しずつ輪郭を変えていった。

　爆風によって薙ぎ倒されていく木々が、メキメキッとちぎれていく。

　本丸御殿の屋根は引き剥がされたようにバラバラと散らばっていった。

　その勢いは凄まじく、“重力”を根元から引き抜いたような烈しさだった。

　元々周りの景色は大きく変化していたが、フレア・ショットが直撃した場所を中心に、次々と形や色が変わっていった。

　敵は宙にいた。

　地面から約10mほどの高さだ。

　その位置も災いしてか、爆風は周りの空間に行き渡るように広がっていた。

　坂本の拘束を解くために放出した敵の炎が、まだ地上に残っている状態だった。

　切り裂かれた地面は、崩壊する砂の綻びの中に蠢いていた。

　黒い炎と、魔力。

　その「奔流」が、地中から溢れてくる。

　敵の魔力もろとも押し倒していく真琴の焔が、空気を灼くように膨らんでいく。

　敵は矢の直撃と同時に吹き飛ばされていた。

　シャボン玉が弾けたように光が散り、重い衝撃音が「線」を伸ばした。

　何かが裂けたような捻れがあった。

　それでいて、素早かった。

　余韻も残さずに弾けた「音」は、短い振動の間隔を携えたまま、サッと鋭い軌道を残していた。

　尖った先端が突き刺さる。

　まさしくそういった“細さ”と、深み。

　体ごと“流れる”。

　そしてその勢いのまま、天守閣の壁に衝突した。


　ドッ


　衝撃が疾る。

　周囲に溶け出すように、崩れた瓦礫が溢れていく。

　白い壁が、広い範囲に渡って陥没していた。

　深い亀裂が、激突した壁を中心に伝播していた。

　敵の体は磔になっていた。

　破壊された壁の向こうで、めり込んだ体を脱力させている。

　壁の中に“埋まっていた”。

　フレア・ショットの被弾によって、皮膚は焼きただれ、蒸発する細胞が剥き出しになっていた。