COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２８７話

　——フレア・ショット


　敵がいる「場所」へと引き絞った矢は、確かな引力を携えながら進んでいた。

　空間そのものに引力が働いているわけではない。

　弓を引く動作。

　——その一端に集中した選択の早さが、エネルギーの“密度”を高めるために作用していた。

　まるで敵に吸い寄せられるかのように疾っていた。

　地面スレスレでありながら、少しも失速する“位置”を持つことなく、空間を這う。

　〈間合い〉と〈距離〉の接触点。

　引き絞る弦の対角線上。

　その“底”に触れる重力の先端を引き伸ばしながら、真琴は溜め込んだテンションを放出した。

　自らの「技」の鋒に、ギリギリまで“捨てた”「感情の起伏」を、乗せて。



　——ボッ！


　
　爆風が周囲に吹き荒ぶ。

　必中効果を得た「フレア・ショット」は、敵の真正面にぶつかるや否や、凄まじい熱を帯びて破裂した。

　テンションの付与効果を得た矢はそれ自体が「爆弾」のような物であり、対象物を破壊するための威力の大半を、矢そのものに“閉じ込めていた”。

　外へと放出するために収縮していた。

　エネルギーは、矢の「中」にあった。

　真琴のテンションが付与できる対象は物質的な境界線を持たない。

　より具体的には、物質としての「限定性」を定めない。

　夜月のオートメーションが適用できる効果対象にはいくつかのカテゴリーが存在するが、真琴のテンションは、“エネルギー”に関わる物であれば自由にその範囲と定点を指定することができ、“数値”の分だけその「量」を加算できる。

　矢の中にエネルギーを閉じ込め、ギリギリまでそれが逃げないように設定していた。

　接触と同時に“放出“する。

　敵はもろに攻撃を受けることになった。

　テンションによって加算された、フレア・ショットの焔を。