COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２７９話

　敵が地面の中に吸い込まれた後、わずかな静寂が流れた。

　夜月は自らの電磁波を通じて中の様子を確認していた。

　敵は拘束されている。

　坂本は地面と一体化になりながら、自らが「拘束」を強化するための形態に変化していることが確認できた。

　しかし長くは保たないだろう。

　拘束できたとはいえ、中の構造は見た目以上に脆い。

　まず、時間が足りない。

　限られた時間の中で展開できたいくつかの行動は、次の行動範囲へと繋げるための中間点を設置するのには“適していた”が、一つの行動を継続するという観点においては、不十分な要素がいくつか散在していた。

　周りの地面の成分、緑間の能力の範囲や強度、そして——


　坂本が取った行動は、自らが支点として動いた行動というよりも、相手の行動によって変化した「受け身」の状態であったと言わざるを得なかった。

　ケースに応じて動ける選択のうち、最も適した行動を見つけ出すのには、あらゆる要素と状況を加味しなければならない。

　その点に於いて、坂本はより正しい選択をしたと言える状況にはあった。

　それがどの程度の「正しさ」を持っていたかはさておき、相手の動きを幾分か封じることができる流れに持っていくことができた、という結果を省みれば、その正当性は高く評価されるべきであろう。

　おかげで、他の天使たちが動ける時間を、作ることができたのだから。