COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２６０話

　「ようやく見つけたぞ。サユリ！」


　悪魔は天守閣の屋根を飛び立つ。

　赤い眼光が空気中を揺蕩う。

　夜月たちのことには目もくれなかった。

　“彼女“の視線の先にいたのは、調査隊でも、武装状態の天使たちでもなかった。

　この状況に全く理解が追いついていない少女。


　——そう、サユリだった。


　バンッ


　勢いよく降り立った先には、夜月たちと合流しようとしていた坂本の姿があった。

　移動の間際、坂本は上空の様子を見ながら、急ぎストーン・タッチの再配置を展開していた。

　元々上空にいくつか設置していたが、場所が場所だった。

　天守閣の周りを囲うようにバランスを調整していた。

　しかし、上空に球体が出現して以降は、移動するべき“ポイント”を変えなければいけなかった。

　真琴を離脱させるための動きを考えるなら尚更だ。

　地上にある地面の土を隆起させ、それを粒子に変換させる。

　ちょうど、チサトの風域がまだ生きている状況だった。

　その魔力の流域を介し、砂塵の嵐を発生させた。


　夜月の動きをサポートすることが最優先。


　“どうすれば最短ルートを辿れるか”


　思考。

　意識。

　環境。

　空間。


　選択の優先度はその都度変わってくる。

　目まぐるしい展開の中で注意すべきは、“いかに敵の情報を正確に把握し続けられるか”だった。

　その点、坂本は周りの状況を把握する能力に長けていると言える。

　思考を追いかける。

　夜月との意思の疎通を図る。

　風により勢いよく吹き上げられた砂や塵が、渦巻く感情の紋様を描いていた。

　張り詰めた空気が、重い扉を開いたようにずっしりと深い質感を帯び始めていた。