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獄炎蝶

第258話

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 緑間が構築した「壁」の耐久力を利用し、真琴の腕を掴む。

 夜月は全身に電気を纏い、坂本の「ストーン・タッチ」と呼ばれるオブジェクトを介して流れるように移動した。

 間一髪のところだった。

 「闇」に全く触れなかったわけではないが、十分に回復ができる程度のダメージで済んだ。

 闇を受けた体の部位は火傷のような跡があった。

 『炎』

 夜月は眉を顰めながら、ダメージを受けた部位を見つめていた。

 恐らく敵の属性は「炎」だ。

 闇の内部に犇く魔力の粒子は【あらゆる属性の性質】を持っていたが、恐らくそれは、何らかの形で“魔力が溶け込んでいた”からではないか?

 と、考えていた。

 魔力が溶け込むというのは、言ってしまえばミキサーの中で様々な物質が混ぜ込まれるような状態だ。

 激しいエネルギーの奔流の中で粒子サイズにまで分解され、融合し、一つの物体になっている。

 そしてその媒質となったものが「炎」ではないか?

 球体が黒いのは、その物質そのものが持つ熱エネルギーが、“あらゆる物質やエネルギーを何らかの方法で取り込んでいる”からだと考えていた。

 というのも、内部に渦巻く魔力の性質の7割が、炎属性に見られる特殊な構造を持っていたためだ。

 球体の外側の温度は数百度にも達していた。

 内部温度はそれをはるかに上回る。

 急速に肥大化したその物体の性質自体が異質であるにしろ、何らかの属性が関わっていることは間違いなかった。

 

 
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