COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２５７話

　バッ



　真琴たちはうまく離脱していた。

　球体から落ちてきた黒い「闇」は、緑間が展開したシールドごと呑み込んでいた。

　真琴たちがいた場所は、すでに消失していた。

　坂本が設置していたダート・スポットの足場。

　その“物質”が消えているのは、魔力の痕跡を辿れば明らかだった。

　「闇」が何で構成されているかはさておき、その性質が物体の形を変えるほどの威力を持っていることは確かだった。

　夜月は真琴の場所まで移動した後、自らの魔力を使って彼女と“接続”した。

　あらかじめ準備していた。

　坂本のダート・スポットは単なる足場ではない。

　彼の構成した「土」は夜月の電気を通す。

　ディスチャージの領域においてもっとも重要な部分は、“チームの能力をいかに活かすことができるか”、——だった。

　坂本は夜月の電磁フィールド上に、いくつかの砂の“オブジェクト“を散りばめていた。

　散りばめられたオブジェクトとリンク状態にあった夜月は、その設置場所を介して通常よりも速い移動空間を形成することができた。

　オブジェクトは１つあたりの大きさが1㎥ほどで、中に水が含まれている。

　ダート・スポットの足場にも同様の成分が含まれていた。

　だからこそ、真琴のいる場所に瞬時に移動することができた。


　敵の攻撃が緑間のシールドを穿つ。

　シールドは“攻撃を完全に防ぐこと”を目的としてはいなかった。

　「バブルガム」の防壁はその強度もさることながら、物質としての弾性が極めて高くなっており、ゴムのように伸縮性が優れた性質を持っている。

　攻撃をクッションのように受け止めることはもちろん、耐久性のある“膜”として拡張することができるため、一種の防護ネットのような役割を果たすことも可能だった。

　衝撃を弾くというよりも”和らげる”。

　真琴を他の場所へと離脱させるための十分な時間を稼ぐ。

　まさしくそういう役割を果たしながら、敵の攻撃の威力を和らげていた。

　シールドが破られはしたが、夜月と真琴が移動するための隙間を作ることはできていた。