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深淵からの使者

第214話

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 対魔族戦闘用の軍事学では、戦闘において任務を達成する部隊の能力を指して、FPI(対戦闘用国際軍事力)と言う。

 戦闘力は相対的なものであるため、各個体上の戦闘力だけでなく、敵の戦闘力と比較しなければ、その実質的な大きさを判断することはできない。

 しかし、比較には定量的な尺度を設けて分析するという作業が必要である。

 ただし、これは簡単なことではない。


 戦闘力を定量的に分析することの難しさは、戦闘力を構成する要素が実に多岐にわたっているためである。

 戦闘は兵員だけで遂行されるわけではなく、多種多様な武器や装備も使用される。

 指揮統制、情報通信、教育訓練、組織構造、士気・規律・団結など、直接的に観察することが難しい要因も戦闘力の発揮に大きく影響する。

 そのため、戦闘力の定量的分析ではEEI/WUVのように単純化された戦闘力の指数を使用することがある。


 EEI/WUVは、1991年に防衛省の内部部局、「構想分析局」が図上演習で利用に適した戦闘力を指数化するために考案されたものであり、個別の天使の価値を表す魔力効率指数(Angels Effectiveness Indicator, EEI)と、対魔族兵団の師団1個の戦闘力を基準にして算出する加重部隊価値(Weighted Unit Value, WUV)という二つの用語をまとめて表している。

 EEIは、地上、及び空中戦で利用される魔力のカテゴリー別に割り当てられた係数であり、具体的には属性、武器(ギア)、特性、魔法量、膂力、知力(IQ)、魔力系統、魔法技能、外部デバイス(魔具や偵察機等)の9種類のカテゴリーが置かれ、それぞれの種別に応じた独自の係数が設けられている。

 例えば、1999年に行われた研究で担当警備区域内の地上部隊が保有する一隊平均魔法量のEEIは15.66、メンバー1人あたりが持つ魔法技能(魔法を扱う上での修練値や魔力効率)のEEIは3.25と見積られている。
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