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深淵からの使者

第213話

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 「どうしてあの人たちが?…っていうか、いつの間に??」

 「どうする?」

 「どうするもこうするも、一旦中断しよう。さかもっちゃん、一旦こっち来てくれる?」

 「…了解」


 連絡を受けた後、坂本は展開していた魔力流域を解除した。

 「ダート・スポット」は坂本自身の魔力の出力が切れても、しばらくの間はその物質としての強度を持続させることができる。

 そばにいたサユリに夜月達と合流することを伝えた。

 作戦は中断。

 その指示に、サユリは理解できていない様子だった。

 さっき綿密に打ち合わせを行ったばかりなのに、と、目をまん丸にして不思議がった。

 無理もない。

 彼女はシュトラースベルガーはおろか、「特務連隊」という存在自体も知らなかったのだ。

 単に調査隊が介入してくるというだけであれば、ちょっとした作戦の相違や不手際があったとしても、必要以上に重い罰則を受けることはない。

 ただし今回の場合は訳が違う。

 行動規約から外れた行為に対して、それ相応の罰則や違反処理を受けるということの恐れよりも、特務連隊が動いているということの事実自体が、夜月をはじめとした他のメンバー達の行動の躊躇いを生んでいた。

 自分たちが行動するよりも、彼らに任せた方が話が早い。

 むしろ、自分たちの行動が彼らの邪魔をしてしまう可能性すらあった。

 特務連隊の一隊の戦力は、FPIという指数上では平均値約55.71に該当する。

 これは1隊だけで約50人以上もの階級天使(第九位以上の天使)が含まれていると算出することができ、それ相応の戦闘能力、及び殲滅力が備わっていることを意味している。
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