COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

霊術院出のエリート

第１８６話

　バサッ

　バサバサッ


　風域で覆われた領域線上に沿って、降下する。

　できるだけ下へ、できるだけ“低く”。

　飛行経路上に影が入る。

　天守閣の“影”だ。

　クリーチャーは空間内の物質を「遮蔽物」として利用しようとしていた。

　地上方向へと滑空する直線的な距離。

　その斜線の外側に回り込もうと、飛行速度を一気に高めた。

　『霧雨』はその動きに沿って湾曲した。

　矢の雨を覆う冷気が、モヤのような白い尾を引いていく。


　降下を試みていた数体。

　その方向とは逆の方角、上昇する飛行経路上に動いていたクリーチャーのうちの１匹は、『霧雨』を真正面から迎え撃とうとしていた。

　空中で反転し、シールドを展開した。

　クリーチャーの魔力は天使と違って不安定なものが多い。

　大抵は「属性」も持ち合わせておらず、魔力のコントロール自体も“ムラ”が多い。

　それでも簡易的なシールドを作れる自体には行動できる。

　霧雨は「数」は多いが、1発1発の威力は大きくない。

　防げると判断したクリーチャーは、シールドの展開後に移動を試みようとしていた。

　接触は免れない。

　免れないが、矢の威力を緩和できる動きができれば、回避できる「間」が生まれる。

　シールドの膜に矢を被弾させ、隙間を作る。

　シールドは壊されても、壊れるまでの時間さえ作れればいい。

　その判断自体は間違いではなかった。

　真正面から迎え撃つだけではなく、受けながら移動する。

　その場に留まれば、直撃する確率が高い。

　シールドの展開後、翼を畝らせた。

　尻尾を曲げ、胴体を捻った。