COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

霊術院出のエリート

第１７７話

　クリーチャーと呼ばれるものは、ブラックストリーム内に融けていく生物の魂が流れ着いた、“異形の怪物”であると言える。

　かつてこの星には「アルケー」と呼ばれる原始生命体がいた。

　原始生命体（げんしせいめいたい、羅: Protobionta、英: Protobiont）とは化学進化による生命誕生直後の状態を有する生命のことであるが、「アルケー」は古来より『個体』という固有情報、及び自己と外界とを隔てる「境界」を持たないゲノムサイズ上の分子構造(細胞間マトリックス)を有していた。

　彼らには「名前」が無く、また、「遺伝情報」という固有体系も存在しない。

　彼らは“何にでもなれ”、そして、「何者」でもなかった。

　魔族や天使、そして人間までもが彼らの生物学的な繋がりの中にあるとされ、その細胞間の“因子”も、未だミクロ単位で絡み合っているとされている。

　「魂」とは、——生命の「成分」は、いわば『可能性』の素子であり、パーツであり、“形を持たざるもの”であると言い換えることができる。

　天使は魔法省の管轄によって「肉体」を付与されるが、魔族はそうではない。

　ブラック・ストリーム内を彷徨った魂が、魔界に蔓延する“負の感情”によって新たな「思念体」へと成長した姿。

　それ故に姿形もバラバラで、特定の構造を持つことがない。

　「個」の状態がすでに失われているのだ。

　天使と違い、悪魔はいくつかの魂が融合した姿に他ならなかった。

　存在自体が湾曲しており、歪で、不安定だ。

　目の大きさや翼の形が、かつて地上にいた生物とは思えないほど。