COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

まだ、未成年なんですが？

第１３１話

　狼の牙。


　時に先輩の攻撃は、電流を身に纏った巨大な狼が、“敵の体を噛み砕いているように見える”と、形容されることがあるそうだった。

　事実、フィールドの中で起こったことは、唐突と呼ぶにはあまりにも豪快で、——鋭かった。

　瀕死だと思われた先輩の様子が一変し、大地が“揺れ”たんだ。

　右手に出現した爪のような剣先が強烈なスパークを発しながら、地面スレスレの〈空気〉を穿つ。


　シュンッ


　それを「斬撃」と言って良いのかはわからない。

　爆発的な脚力で地面を蹴った先輩は、右手に伸ばした「牙」を下に垂れ下げたままだった。

　脱力した状態からの跳躍。

　その飛翔の途上に視えたのは、ギリギリまで敵の位置を呼び込もうとする「呼吸」だ。

　敵の体に届く距離。

　その境界面まで近づこうとも、決して攻撃を先走らない。

　確実に、——しかし大胆に仕留める。

　確かな“気概”と澄み切った殺意が、１つのモーションの中に込められていた。

　振りかぶった右腕と、とめどない時間の奔流の底に。