COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

バトルフェスティバル 地区予選編③

第１２４話

　「まだ勝負はついてない」


　リオンの口調は穏やかで、それでいて冷静だ。

　サユリはその言動がにわかには信じられなかった。

　槍がリンの体を貫いた後、勝負はついたものだと思った。

　リンはもう戦える状態にはない。

　槍の先端が心臓を捉えている。

　じきに審判団が合図を送るはずだ。

　それが頭の中にあった。


　「リン姉は心臓がなくても、まだかろうじて体を動かすことができる」

　「…え？」

　「それに、リン姉は近接距離に於いて無類の強さを誇る。その理由はわかるかい？」


　近距離に於いてのリンの強さ。

　それを一番理解しているのは同じチームに所属しているものたちだった。

　例え心臓を貫かれても、自らの体に電気を走らせることで脳の機能と筋肉を連動させる。

　カーティスは攻撃にのみ意識を注力していた。

　「次」の行動を考えていなかったのだ。

　勝負はこの一撃で決まる。

　その一点への行動に、“全ての時間”を集中させていたからだ。