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バトルフェスティバル 地区予選編②
第86話
しおりを挟むズザザァァァァァ
体の数箇所に傷を負いながらも、後方へとステップアウトする。
先輩を追跡する敵の攻撃はタコの足のように伸び、後ずさる軌道線上に交錯しながら地面を持ち上げていた。
崩れた魔法障壁の破片が空気中に飛散する。
ステップの最中に衝突する粒子の波が、数秒のうちに乱れていく。
先輩の取った「選択」は、敵との距離、——その平行線上において僅かな遅れもなく“直進していた”。
後方への離脱はそれだけの緊急性を要するものだった。
一歩遅れれば、あるいは——…
「判断は間違ってないと思う」
「うまく逃げ切れたってこと?」
「…いや、どうだろう」
魔法流域には「幅」と「量」がある。
リオン君は言った。
もしかしたら、カーティスは相手の出方を待っているのかもしれない。
——というのも、躍動する地面とその攻撃は、何十mか進んだ先で止まった。
これには理由が2つあって、1つは、相手の動きをコントロールするため。
そしてもう1つは、魔法の出力領域に“限界”が生じたため。
天使にとっての重要なパラメータの1つは「魔力量」だけど、それを出力する上での範囲と効率は、使用者によって大きく異なる。
けど例外なく言えることが一つあり、それは魔法流域の体積、——つまり3次元ベクトル上の球面において効果が及ぶ範囲には“上限”があるという点であり、魔力を展開できる「領域」には、使用者の魔力と比例した「最大出力幅」があるという点である。
魔力を展開するための【容器⇄内蔵量】がどれだけ大きくても、それを一度に展開できる量や幅にはある一定の上界値があり、その基準を越えて魔力を出力することはできない。
蛇口から出る水の量には1秒(m/s)あたりの最大値が存在する。
コンセントから引っ張った電気量にも、1秒あたりに流せる電流の強さ(電気が流れる速度や量)が存在している。
仕組みとしてはそれと同じで、魔力を出力する上でもっとも重要となるのが、使用者が利用できる魔法流域には、単位体積・面積・長さあたりに魔力量が分布する割合が決まっている、という点だ。
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