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バトルフェスティバル 地区予選編②
第84話
しおりを挟むドドドドドッ
地面が揺れる。
連動する。
砂の粒子が細やかな形の変化を伴いながら、瞬く間に凝固する。
せり立つ岩肌。
うねりが加速する地層。
鮫が口を開けたようだった。
敵を噛み砕くための牙が、下から上へと突き出てくる。
それは「咀嚼」ではない。
肉を引き裂くためのものじゃない。
あくまで敵の体を貫くためのもの。
だからこそ、おびただしい数の矢じりが先輩に襲いかかった。
地表の隙間を覆うほどに、——速く。
ダンッ
半径50m圏内。
敵の動きを察知した先輩は、すでに後退の一歩を踏んでいた。
敵の射程圏内からの脱出。
その緊急性は、最初の〈一歩〉で始まっていた。
数秒単位にも満たない「選択」。
先輩の取った行動は、攻撃へのあらゆる要素を省いた“動作”の中に投じられていた。
地面を蹴り上げる跳躍。
低い重心。
ステップ音が響きながら、スニーカーの底が擦れる。
勢いのままに砂埃が上がった。
ザザーーァァッと、脇目も振らず後ずさった後に。
隆起した地面は、尖った形とその先端を残したままだった。
逆立つ髪の毛のような棘と、幾本もの刃。
細長いその形状は、地面の上に立つ氷柱のようにきめ細やかな円錐形を形どっていた。
まるで竜の背中だった。
その軌跡は、先輩の後退したルートを辿り、見るからに荒々しいまだら模様を描いていた。
せり立つ土の躍動の“中”に。
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