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バトルフェスティバル 地区予選編②

第83話

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 「ね?だから言ったろ?」

 「ね、じゃなくて、こんなのずるくない?」

 「何が?リン姉も予測してたとは思うよ?その上で突っ込んだんだ。相手が動くよりも早く展開する。結果、間に合わなかったけどね」


 相手の姿は元の色や輪郭を失っていた。

 と言うか、作りかけの土人形みたいだった。

 皮膚はバラバラと落ちる無数の砂で覆われながら、常に流動し、”動いている“。

 結合と分離を繰り返しながら、かろうじて”人の輪郭”を保っていた。

 砂時計の底に溜まっていく、ゆるやかな曲線の山みたいに。


 足は地面と繋がっていた。

 その境界線はすごく曖昧だった。

 どっちが本体なのかがわからないくらいだった。

 上が本体なのか、下が本体なのか。


 「来るぞ」


 隆起する地面。

 敵の攻撃を被弾し、後退した先輩の隙をつく。

 何本もの岩の「槍」。

 凝固する砂粒の分子。


 ボッ

 ボッ
 
 ボッ


 鋭い切先が、次々と地面の底から現れる。

 交錯する影が、入り乱れるように織り重なっていく。


 波。


 まるで海の水面を見てるみたいだった。

 ゆらゆらと揺蕩う水面の上で、時折、白い水飛沫を立てる渦。

 …いや、これは「水面」というより——

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