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バトルフェスティバル 地区予選編①

第52話

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 「わぁ」


 転送装置の先にあったのは、“パンデモニウム”と呼ばれる化学センターの一室で、金属でも木でもない謎の素材であしらわれた空間が、背の高い天井の下に現れた。

 天界の空が、窓の向こうにあった。

 装置の外には白衣を着た天使がいた。

 仏教ヅラで、無精髭を生やしていた。

 縁のないメガネをクイッと持ち上げながら、バトルフェス用のパスを渡せと言ってきた。


 「会場への行き方はわかるのかね?」


 …会場への行き方?

 ここが「会場」なんじゃないの?

 確か、リンドブルム鉱山でしょ?


 「ここは鉱山の近くの研究センターなだけで、会場じゃないよ」

 「近いんですか?」

 「10キロくらい?」

 「10キロ!?」


 まあまあな距離じゃないか。

 どうやって行くつもりなんだろうか。

 外を見ると長閑な平原が広がっていた。

 いくつもの小高い丘と、痩せ細った大地。

 色褪せた土の色が、見渡す限りに続いていた。

 茶色い平野に立ち込める砂埃が、ヒュウウっという音を響かせ、もの寂しい雰囲気を連れてきていた。

 コロコロと転がっている丸まった枯れ草。

 水気のないひび割れた土。

 砂漠とまでは言わないが、緑がほとんどない。

 鉱山の下には豊かな森があるって話だけど、ほんとにあんの!?
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