COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

バトルフェスティバル 地区予選編①

第５１話

　装置の中に入り、転送が始まった。

　鉄の扉が閉まると、鈍い音が空間内に響き渡りながら、レーザーが照射される。

　全身の細胞スキャンが完了した後、転送プログラムに移行する。

　個人のデータがコンピュータ上にエクスポートされ、分子サイズに分解される段階へと入った。

　痛みはない。

　足先から徐々に感覚がなくなり、全身がゆっくりと透けていく。

　自分の体が無くなっていく映像を目の前で観察することができるんだが、何度やっても多分慣れないだろう。

　誰かと一緒にここに入るのは初めてかな？

　私と同じように夏木先輩の体も分解され、パウダー状に細胞がほどけていく。

　バラバラになった体が全身を覆う頃には、目の前の景色も段々と変化していった。

　ボックスの中の壁や配線が消え、地面も天井も、ゴムを引っ張ったように引き伸ばされ始めた。

　ワープゲートの中は、時間の流れも空間の大きさも変わる。

　虹色のカラフルな光が無造作に入り混じり、まるでオーロラの中を浮遊しているようなトンネルが、回転する視界の中に現れるんだ。

　へんな感覚かな？

　ボーッとするというか、夢の中のフワフワした感じというか。

　5分もしない間に、バラバラになった自分の体が再構築され始める。

　抽象画の絵の具の中のようなあやふやな色彩も、次第にはっきりとした線を帯び始めた。

　意識も回復し始め、胸を打つ心臓の鼓動が、少しずつ大きくなっていく。

　装置の中の構造は、エクスポート先とインポート先でほとんど変わらない。

　転送が終わった直後は、自分が本当に移動したのかどうかもわからないほど、見た目に変化がなかった。

　ドアが開いてからだ。

　天界にやってきたと、認識できたのは。