COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

今日からお前は私の従者だ

第３５話

　「この前はちゃんと聞かなかったけど、私たち友達だったんでしょ？」

　「子供の頃からな」

　「ふーん。仲良かったの？」

　「まあ、そりゃ…」


　河川敷の土手の上を走りながら、少しずつ明るくなる空が、橋の欄干の向こうに見えた。

　鳥の囀りと、穏やかな川の流れ。

　街の喧騒は嘘みたいに静かで、朝露が、道端の草原を濡らしている。

　自分が人間だった頃、広い河川敷の上から見えるこの景色を、一度でも目にしたことはあったんだろうか？

　男は息を切らしながら、必死に私のあとを追ってきた。

　無理だよ。

　見習い天使とはいえ、人間とは体力が比べものにならない。

　ついてこようとすることが間違い。
　
　そんなこと、説明したくてもできないけど。


　「どこまでついてくんの？」

　「どこまででも」

　「はぁ…」


　しょうがない。

　こうなったら聞いてやろうじゃないの。

　そのかわり、他言は禁止。

　めんどくさいことはやだからね。

　人ん家の敷地に入ってくるなどもってのほか。

　あと、納得したらもう私とは関わらないこと。

　私の「友達」なんだったら、そこはちゃんとしてもらわないと。



　「詳しく聞かせてくれる？」

　「え？」

　「だーかーらー。話を聞いてあげるって言ってんの」


　膝をつき、ゼーハーゼーハーと呼吸を整えている。

　ちょっとペースが早すぎたかな。

　ごめんごめん。