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まずは名を名乗れ

第29話

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 男はしつこくついてきた。

 何度も引き離そうとしたけど、後ろをついて歩いてきて。

 知り合いを装ったストーカーとかじゃないよね?

 まあそれはないか。

 神宮寺健人ねぇ…

 なんだよ「キス」って…

 どんな関係だったか知らないが、再会していきなりキスを要求してくる人に、ろくな奴なんていないだろ…

 私が亡くなった年齢は18の時だ。

 キスぐらいは経験しててもおかしくない歳ではあると思うが、


 …いやいや、キスだぞ「キス」!??


 経験あるのか私…?

 仮にあるとして、コイツと……?


 いやいやいやいやいや



 「いい加減にしてくれません?!」

 「話を聞いてくれって!」

 「私の話はもう終わりました」

 「俺の話は終わってねぇ!」


 それ込みでの“私の話が終わった”って言ってんの。
 
 わかる?

 これ以上ついてこられると住所を特定されかねん。

 あ、でもいいか、いざとなったら夏木先輩にぶっ飛ばして貰えばいいわけだから。


 「なんでそんな怒ってんだよ」

 「怒ってません」

 「お前の事情はわかったから!何があったか知らないが、一回止まってくれ」


 ダメなものはダメです。

 止まって話をしろと?

 してどうなるの?

 感動の再会でも果たすわけ?

 生憎そんな気分じゃないんでね。

 きついトレーニングのせいで他人を気遣ってられるほど余裕がないんだよ。

 わかったら解散!

 さっさと消えて!


 
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