あの頃の僕たちは


 「俺、未来から来たんだぜ?」

 「何それ…」

 「俺とお前は永遠の親友。って言っても、可能性のひとつだけどな?」


 菅野拓也はへんなやつだった。

 出会った時から、まるで昔から知り合ってたみたいに絡んでくるやつだった。

 俺たちは同じ町の、違う地区に住んでいる子供だった。

 中学生になるタイミングで同じ学校になり、クラスも同じになった。

 拓也は野球が好きだった。

 いつかプロ野球選手になるんだって夢見てて、そのために“過去に戻ってきたんだ”って、息巻いてた。


 「俺さ、人生をやり直したいんだ。未来じゃお前を殺しちまったけど、この世界じゃ、絶対にそんなことしないから」

 「俺を殺した!?」

 「ハハッ。まあ笑えない話なんだが、一応言っておく。俺はお前を殺した罪で指名手配になって、逃亡中に死んだ」

 「はあ??」

 「まあ、大丈夫だ。こっちの世界じゃ、なんの関係もないことだから」


 俺を殺した?

 最初聞いた時、頭おかしいなって思った。

 信じるつもりはなかったし、それは今もだ。

 拓也はどこか、他のことは違ってた。

 どこか別世界にいるようで、他の子にはない明るさを持ってて。


 いつも笑顔を絶やさないやつだった。

 いつも、人一倍努力してるやつだった。

 拓也の訃報を聞いた時、俺はどうすればいいかわからなかった。

 かつて同じグラウンドにいたあの頃のことを思い出して、夏の終わりに蝉時雨が、町のどこかに響いてて。
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