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キミと明日を駆ける
第7話
しおりを挟む「…えーと」
さっきも言ったが、彼女とは初対面だ。
この「世界」では。
かつて、私たちは親友だった。
まあそれはずいぶん昔のことなんだけど、…と、それは今は別にいいか。
楓。
私はあんたを救いに来た。
頑固なあんたが、黙って言うことを聞くように、ちゃんと作戦も練ってきた。
とっておきなんだぞ?
大体、あんたはいつもいつも…
「…誰…ですか?」
さっきも言ったけど、彼女と私は“初対面”だ。
だから彼女の反応は至極真っ当で、少しも変じゃない。
だけどそんな顔すんなよ。
この頃のあんたと会うのは、久しぶりなんだからさ?
「あんたの友達や」
友達で、親友。
自己紹介を忘れてた。
私は、桐崎千冬。
あんたと同い年で、どこにでもいる女子高生だ。
説明すると長くなるから、以下省略。
キーちゃんって呼んでくれたらいいよ?
昔のように。
「キー…ちゃん?」
「呼びやすいやろ?」
「えっ、…はい、まあ」
「今時間ある?」
「これから学校なんですけど」
「ってことは、時間があるってことやな?」
「ええ!?」
こんなとこで話すのもなんだ。
とりあえずそこのスタバに寄ろう。
あんたの好きな抹茶ラテを奢ってあげる。
あとプリンも。
「ちょちょちょ…!」
無理やり手を引っ張ると、楓は嫌がった。
抹茶だけじゃ足りないか?
しょうがない。
だったら——
「学校ですってば!」
「1日くらいええやん」
「よくないですよ!大体誰ですかあなた!」
「せやから言うとるやろ?“友達“やって」
「知らないですけど」
…はあ、かったるい。
どうせこんな展開になるだろうとは思ってた。
他にも色々プランはあったんだけど、ストレートに言った方が手っ取り早いじゃん?
やましいことなんてひとつもないんだから。
「木崎亮平のことは?」
「…え?」
「アイツのことは知っとるな?」
「…ああ、はい」
「私はアイツの友達や。せやから、あんたとも友達。この理屈、わかる?」
ほんとは、違う。
亮平とは友達だけど、それ以前に、楓とはずっと以前から友達だ。
でもこう言った方が、きっと楓の耳には届く。
今、アイツのことをあんたがどう思ってるのかはわからないが、さっきよりはだいぶマシでしょ?
“見ず知らずの女子高生から声をかけられた”ってシチュエーションより。
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