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神なんて存在するわけない

第5話

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 信じるつもりはなかったんだ。

 爺ちゃんが入院してから、俺は何度も神社に足を運んだ。

 意味もなく手を合わせてた。

 “助けてほしい”って、心の中でお願いしてた。


 あの当時の俺は、まだ、「神」が何かなんて知ろうともしなかった。

 爺ちゃんの絵の中にある「何か」を感じ取っても、それがどこに繋がっているものかを、手を伸ばして探そうともしなかった。

 だから、もしかしたら“いるかもしれない”って思ってた。

 それが「神」なのか「仏」なのか、はたまた「物の怪」か、形容する言葉はなんでもよかった。

 神秘的な存在だっていうことだけはわかってた。

 他に説明できるようなこともなかったし、それに…


 和茶に出会ったのはそんな時だった。

 古びた神社の正面に立ち、手を合わせてお祈りしていた時だった。

 声が聞こえたんだ。

 神社の建物の中から。


 「おい、童。奉納する金もないのに手を合わせるだけか?」

 「………!?」


 聞き間違いかと思った。

 最初、その声を聞いた時は。

 何週間も通ってた。

 俺以外、神社に来る人なんていなかった。

 森の中はしんと静まりかえってて、ささやく風の音が、染み渡るように流れていた。

 鳥や虫の声と、多い茂った緑と。

 木漏れ日が、わずかな光の粒を届けるように神社の屋根を照らしていた。

 中は見えなかった。

 真昼間でもだ。

 扉は開きそうにもなかった。

 建物は歪んだようにさえ見えて、今にも崩れ落ちそうだった。


 人の声なんて、聞こえるはずがない。

 
 そう思いながら、周りを見渡した。

 そしたら、また、「声」が。


 「お前みたいな奴がくるところじゃないぞ、ここは」


 木漏れ日が降る屋根の上に、少女はいた。

 片膝を立てて座っていた。

 どこか偉そうで、こっちを見下したように。


 「…キミは?」


 なんでこんなところに…?

 当時俺は中1だった。

 小学校を卒業して間もなかった。

 見た感じ同い年くらいの女の子が、ひらりとした白い和袖を着て座っている。

 しかも、「屋根の上」に。

 幽霊かと思った。

 それくらい、びっくりした。

 いるはずのないところにいる。

 そのことの“異常さ”は、火を見るより明らかだった。

 恐怖さえあった。

 だって、あまりにも唐突だったから。

 服装も服装だし、場所も場所だった。


 …一体いつからそこに…?


 そう思う感情のそばで、目が点になる。

 後ずさる俺を追うように、少女は屋根から降りてきた。

 巨大なゴーグルを額にかけ、緑色のリボンで後ろ髪を縛っていた。

 オレンジ色の髪に、オレンジ色の瞳。

 どこかイタズラっぽい顔つきで、独特な雰囲気を持っていた。

 見た目は少女でも、得体の知れない気配があった。

 少女なのに少女じゃないっていうか、へんに大人びてるっていうか。

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