麦畑の見える丘で


辺境の星、ガルドープに住んでいた少女ミトと老婦アリスは、血の繋がっていない者たちだった。

戦争で母を亡くしたミトを引き取ったアリスは、10年間、彼女が独り立ちできるように、「星の子」としての教えを説いていた。

いつか、誰もが星を旅立つ日が来る。

戦争で焼き尽くされる野原が目の前にあっても、私たちはいつか、星と決別する日が来る。

だから畑に野菜や穀物を植えて、雨が降る日を待ちなさい。


アリスは言うのだった。

私たちは誰もが完璧ではないのだと。

「言葉」はいずれ形を失い、銀河星雲の星屑の中に消えていく。

運命の砂時計はすでに落ち始めている。

時間の経過の中で絶えず物事は変化し、昨日まであったものは、流れ星となって消えていく。


ミトは願っていた。

いつか星を旅立つ日が来たとしても、2人で過ごしていた時間が、世界のどこかで残っていくこと。

いずれ星と決別する日が来るとしても、アリスに伝えたかった想いが、——「言葉」が、闇の中に閉ざされてしまわないことを。
24h.ポイント 0pt
0
小説 193,940 位 / 193,940件 SF 5,455 位 / 5,455件

あなたにおすすめの小説

海抜ゼロ

窓野枠
SF
 大学生の遠藤雅子は、毎日、水泳の記録更新に向けて泳いでいた。  ビジネスマンの大川真一は、仕事を終えると、スポーツ・ジムで水泳をした。  ある時、2人は、スポーツジムのプールで出会う。そこで、2人は泳ぐ仲間という共通項で惹かれ合う。  ある日、彼らは2人で泳ぎながら、ずっと待ち望んでいた相手であることを感じた。  天文学の権威、田所平八郎は、電波望遠鏡で存在を知るM78星群のα星が、35億年前に、爆発しており、その爆発の衝撃波、隕石が地球に飛来することを計算により時期を導き出す。隕石の落下は、地球上に大津波を起こし、各地に地震を誘発させる。やがて、隕石の熱は北極の氷を溶かし、水位を上昇させていくことが予測された。  田所の研究は学術会議の場で公表され、世界の科学者は騒然となる。その隕石衝突の計算の正当性をめぐって、意見は分かれた。衝突を取るか、取らないかは、各国政府の対応により割れた。  日本政府は田所の意見を元に、1億1千万人を収容する地下シェルターを建造し、避難する方法を提案した。津波による水没に耐えられる施設である。機密性、耐久性、強度を高める研究がなされた。そして、人類存続のため、施設建造に向け、国民は一丸となる。  隕石衝突の危機がやがて訪れる。田所の助言により、隕石の規模など、正確な発表は10年間遅らされていた。日本政府は秘密裏に巨大宇宙船の建造を、宇宙空間に10年前から進めていた。  政府はすべての生物の精子、卵子を冷凍保存し、新たな地球を目指し、地球を飛び出す計画だった。多摩地区の地下シェルターは宇宙へ旅立つための準備施設だった。多摩地区で作られた部品は、宇宙エレベーターで大気圏外に建設中の宇宙船に運ばれていた。しかし、巨大宇宙船とは言っても、積載した精子と卵子を育てるための研究者たちしか乗せることができなかった。田所の観測で、その新天地の星の候補が、幾つか挙げられていた。  田所の研究により、隕石が地球に落下する日にちが割り出された。建造中の施設は2つとも建設半ばであった。地球上のすべてが大津波により破壊されていき、北極圏の氷は隕石の熱により溶解してしまう。水位は上昇し大陸が沈んだ。大津波や地震により、多数の人間が水死、圧死、焼死、様々な死に方で死んでいく。  しかし、その絶体絶命の環境に生き延びた人々がいた。それは、泳がないといられない人々だった。彼らは新しい環境に適応できる身体に進化していた。彼らは新しい環境で、新しい身体で生きていく決意を仲間と共にする。人間に代わる新しい種族の誕生だった。

日本昔話村

たらこ飴
SF
 オカルトマニアの唐沢傑は、ある日偶然元クラスメイトの権田幻之介と再会する。権田に家まで送ってくれと頼まれた唐沢は嫌々承諾するが、持ち前の方向音痴が炸裂し道に迷ってしまう。二人が迷い込んだところは、地図にはない場所ーーまるで日本昔話に出てくるような寂れた農村だった。  両親が若い頃に体験したことを元にして書いた話です。

【第1章完】ゲートバスターズー北陸戦線ー

阿弥陀乃トンマージ
SF
『ゲート』……21世紀も四半世紀を経過しようとしたその頃、世界各地に突如として現れるようになった空間に生ずる大きな黒い穴を人類はこのように呼称するようになった。  そのゲートからは様々なもの、『イレギュラー』が出現するようになった。大別すれば、三種の恐るべき力を持った存在である。これらイレギュラーは世界各地で暴虐の限りを尽くした。戸惑いながらも人類は連携を取りながら、これらの敵性的存在の迎撃に当たった。人類はその為に構築した迎撃体勢組織を『ゲートバスターズ』と呼ぶようになった。  これは日本の北陸地方でゲートバスターズに所属する三人の少年とその仲間たちの物語である。

ホロボロイド

SF
日本、いや世界で人気を誇るホロボロイドバトル。 プロプレイヤーや配信者、さまざまなコンテンツ展開もされて今やプレイした事がない人はいないと言われるほどである。 アプリケーションや実際にホロットを利用したバトルなど見ない機会がない。 そんななか主人公根尾兎乃は両親がロボットのせいで亡くなったという理由から祖父母にホロボロイドバトルに関わるほぼ全てのことを禁じられていた。

星屑のリング/あたしの夢

星歩人
SF
「星屑のリング/リング」の導きの第3弾で、「星屑のリング/わたしの海」のヒロイン、ウルスラの物語です。 途中から「星屑のリング/リングの導き」の裏話になっています。

装甲を纏い戦う者達

ブレイブ
SF
未知の物質が発見され、未知の物質はアルカディアと命名され、アルカディアが適応すれば人に驚異的な力を与える。人をほおっては置けない白黒忌子はただの学生として過ごしていたが、特異災害、アドヴァルサの侵略攻撃の中、忌子の想いによって力が目覚めた

共鳴のヴァルキュリア (全話再編集完)

成瀬瑛理
SF
「少年は愛するものを守るべく、禁断の力を手にする。その時、運命の歯車は大きく回り始める――!」 ※アザゼルの突然の襲撃に混乱する第6宇宙拠点基地ラケシスのコロニー。敵の放った最新型のドールアームズ、アークの襲来にアビスで抵抗するラケシスのパイロット達。激闘が繰り広げられる中、さらなる嵐が巻き起こる。 第1話〜第6話編集完了。→第7話編集中。

プログラムされた夏

凪司工房
SF
アンドロイドAI学習施設に勤務する若き研究者の夏川大輝は、最新の女性型アンドロイドに「夏を教えてほしい」という依頼を受ける。 漠然としたものの学習は難しく、試行錯誤するが彼女は夏を理解してはくれない。 そこで彼は一計を案じる。 夏を理解した彼女を依頼人へと返し、うまくいっているように見えた。 だが数日後、依頼主が怒鳴り込んでくるのだった。

処理中です...