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試合
第682話
しおりを挟む勝つために練習してきたのは間違いない。
だけど、それよりもずっと大事なこと。
自分を信じるってこと。
なんのために竹刀を振ってきたのか。
それは亮平自身がよくわかってるとは思う。
もちろん試合に勝つためだったり、結果を残すために、今日まで頑張ってきたと思う。
勝たなきゃなんの意味もないって、そりゃそうかもしれないけれど…
時間は前に進んでる。
そこに過去も未来もなくて、時間の先端を掴めるのは、踏み込める足があるかどうか。
どれだけの長い時間でも、どれだけの短い時間でも、「今」はたった1つだけ。
この瞬間、——この1秒の、何億分もの1点の中にしか、触れられないものがある。
それを言葉で表すことはできない。
きっと、言葉なんかじゃ追いつけないものだとも思う。
練習は嘘をつかないってよく言うけど、本当は、もっと早く動けるものがあるんじゃないかな?
例えば、ほら、“練習に嘘をつかない”って感じ?
うまくは言えないけど、試合に勝とうが負けようが、その前の時間の方が大事なんじゃないかなって思うんだ。
100m走で良いタイムを出そうと思ったら、途中で止まれないでしょ?
あれとおんなじで。
川沿いの土手を走る。
乗り慣れた後部座席。
キキーッ
というブレーキ音のそばで、曲がりくねった道。
彼の背中を見てた。
一生懸命ペダルを漕いでる姿を。
「早く早く!」
試合会場まで全速力で漕いでた。
みんなとバスに乗って行っても良かったんだけど、近いってことで現地集合にしたんだ。
彼はブツブツ文句言ってた。
「いい加減自転車買えや」
「なんで?」
「なんでって、毎回乗せなあかんやん」
「ええやん」
「よくないわ」
そういうことは私に勝ってから言ってくださいよ。
反論したら規約違反だって言われた。
学校には連れていくが、「それ以外は知らん」と。
「細かいことは気にすんな」
「ガサツ女が」
「ひっぱたくで?」
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