雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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風の通り道

第627話

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 ——空を駆ける星。

 雲を運んでいく風。

 翼を広げた飛行機が、音の届かない暗闇へと飛び去っていく

 
 街のネオンに、ヘッドライト。

 対岸線を走る貨物列車。

 踏切。

 路地。

 ——人ごみ。



 …ここが、死後の世界?



 そんな、馬鹿な。




 「事故にあったでしょ?」



 思わず、耳を傾けた。

 それがどんな時間を持っているかも、調べずに。


 「…そう…だけど?」

 「あの時、もしかしたらここが死後の世界だって、考えなかった?」
 

 考えた。

 考えたけど、それがなんだっての。

 死んでるって、…そう言いたいわけ?


 「元の日常に戻りたいって、今でも思ってるはず。朝目が覚めて、何事もなくアラームを消して。毎朝日付を確かめてるあなたが、考えてたことは…」


 まるでそれが、「過去」の事のように彼女は話す。

 今日のこと、明日について。

 それが「昨日」の中にあるかのような口ぶりで。


 あり得ないと思った。

 …なにがって、それをうまくは話せなかったけど。



 「彼の言葉を、もう一度よく思い出してみて?」

 「アイツの…言葉?」

 「世界の楔、クロノクロスネットワーク、——未来。彼は見つけたんだ。信号機の色を変える方法を」


 信号機。

 交差点。


 キーちゃんの言葉をうまく掴めない。

 潮の流れよりも速い“疑問”。

 その狭間でたゆたう言葉の韻を、ただ。


 「彼は、セカンド・キッドになろうとしたの。あなたに代わって、未来を守ろうとしたのよ。あなたに追いつき、——追い越して」


 セカンド・キッドに、なる…?

 ちょっと待って…

 どういうこと??

 アイツが?

 …なんで?


 「それが唯一の方法だったからよ。時間に縛られたあなたを救い出すための」


 「セカンド・キッド」がなんなのかは、もう知ってる。

 よくわからないことだらけでも、どんな「存在か」くらいは。

 だから、余計意味がわからなかった。

 亮平は、セカンド・キッドなんかじゃない。

 この世界、——最初の世界に生まれている。


 …うん。

 きっと間違ってなんかいない…

 1995年に地震が起こった。

 この神戸の街、明石海峡沖の地層で。


 それで、私の父さんは死んだ。

 …そこまではわかるんだ。

 そして未来で、「過去」が変わって——
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