628 / 698
風の通り道
第627話
しおりを挟む——空を駆ける星。
雲を運んでいく風。
翼を広げた飛行機が、音の届かない暗闇へと飛び去っていく
街のネオンに、ヘッドライト。
対岸線を走る貨物列車。
踏切。
路地。
——人ごみ。
…ここが、死後の世界?
そんな、馬鹿な。
「事故にあったでしょ?」
思わず、耳を傾けた。
それがどんな時間を持っているかも、調べずに。
「…そう…だけど?」
「あの時、もしかしたらここが死後の世界だって、考えなかった?」
考えた。
考えたけど、それがなんだっての。
死んでるって、…そう言いたいわけ?
「元の日常に戻りたいって、今でも思ってるはず。朝目が覚めて、何事もなくアラームを消して。毎朝日付を確かめてるあなたが、考えてたことは…」
まるでそれが、「過去」の事のように彼女は話す。
今日のこと、明日について。
それが「昨日」の中にあるかのような口ぶりで。
あり得ないと思った。
…なにがって、それをうまくは話せなかったけど。
「彼の言葉を、もう一度よく思い出してみて?」
「アイツの…言葉?」
「世界の楔、クロノクロスネットワーク、——未来。彼は見つけたんだ。信号機の色を変える方法を」
信号機。
交差点。
キーちゃんの言葉をうまく掴めない。
潮の流れよりも速い“疑問”。
その狭間でたゆたう言葉の韻を、ただ。
「彼は、セカンド・キッドになろうとしたの。あなたに代わって、未来を守ろうとしたのよ。あなたに追いつき、——追い越して」
セカンド・キッドに、なる…?
ちょっと待って…
どういうこと??
アイツが?
…なんで?
「それが唯一の方法だったからよ。時間に縛られたあなたを救い出すための」
「セカンド・キッド」がなんなのかは、もう知ってる。
よくわからないことだらけでも、どんな「存在か」くらいは。
だから、余計意味がわからなかった。
亮平は、セカンド・キッドなんかじゃない。
この世界、——最初の世界に生まれている。
…うん。
きっと間違ってなんかいない…
1995年に地震が起こった。
この神戸の街、明石海峡沖の地層で。
それで、私の父さんは死んだ。
…そこまではわかるんだ。
そして未来で、「過去」が変わって——
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる