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第584話

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 「運命?」

 「そう。運命。私たち3人が歩いていける時間」


 そんなこと言ったって、漠然としすぎてない??

 大体あなたは、自分がどこから来たかもわかってないんでしょ?


 「そうね。でも、あなたに会いに来たのよ」

 「何しに?」

 「その言い草、ひどくない?(笑)まあ、いいけど」


 私に会いに来た。

 遠い世界から。

 確かな目的があるわけじゃなかった。

 気がついたら関空行きの飛行機に乗って、片道20時間の距離。

 電車の切符を買い、神戸まで。

 
 座標は指定していなかった。

 ただ、未来で知ったみたいだった。

 私が、色んな時間を旅していること。

 今も、キーちゃんが歩ける世界線を探していること。


 「偶然」だって、彼女は言う。

 どんな出来事にも因果関係はある。

 だけど「桐崎千冬」という人間が病気になったのは、あなたが生まれたせいじゃない。

 それを伝えに来てた。

 
 だから、一緒に未来を変えよう。

 焼きそばパンを口に咥えて、そう言うんだ。

 方法はわからないが、きっと何か…

 何か、…突破口があるはず。

 探せば、絶対に


 …気持ちはありがたいけど、状況が全然把握できてないんだ。

 亮平を救わなきゃいけないのはわかる。

 元の世界にだって帰りたい。

 忘れたスマホを取りに帰って、神戸中央高校の門をくぐって…



 『色んな時間を旅してる?』


 誰が?



 「あなたが」

 「ふーん…」


 放課後、アキラと綺音を誘って、スタバで話をすることにした。

 キーちゃんに何か考えがあるらしかった。

 未来を変える方法。

 2人からしたらなんのこっちゃって感じだろう。

 そう言う私もそうなんだが、まあ、わからなくはない。

 「方法」なんてものは知らないが、彼女の気持ちくらいは。



 一緒に走ろう。

 未来から来たその言葉を、コーヒー牛乳と一緒に飲み込む。


 亮平といいキーちゃんといい、どんだけ走りたがるんだよ…

 けど、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

 走るのが好きっていうのもあるが、多分、それだけじゃない。

 昼休憩が終わって、階段を駆け降りた。

 早く早く!と急かす彼女を、追いかけながら。
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