雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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世界と楔

第489話

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 父はこの「不規則性」に、頭を悩ませていた。

 時間の流れとは、常に“一定数”ではない。

 というのも、ストップウォッチで計った10秒先の世界は、その初期的な計測によって導き出された一つの現象へのアプローチに、100%の還元性を持たなかったからだ。

 「100%の還元性」とは、サイコロの目が1になるタイミングの確率に向けて、発信された言及を指す。

 もし、同じタイミング、同じ運動量、また、そのほかの諸条件を合わせた状態に限定した上で、物理的にも全く同質な性質を持つサイコロを振った場合、1の目が出る距離や時間量は、一意的に定めることができるはずだ。

 が、条件が全く同じ状態でも、違う結果になるという事実が発覚した。

 これにより、「時間」とその「距離」が互いに乱雑な状態に重ねがけできる確率変動値が、“1つの場に対して複雑的に”導き出される結果となった。

 これは先ほどに述べた「雲の流れ」のように、「現在」と「未来」の境界に対してある特定の「有限値=限定されたサイコロの目」が無いことを指していた。


 もし、時間が不規則な要素を排除できず、1つのエネルギー状態に対して明確な境界=運動量の決定値を特定できないならば、人間の脳の中に保存されている情報を、コンピュータ上で凍結することは不可能なのではないか?

 と、父は懸念した。

 なぜなら、あらゆる時間とその流れの中でひとつの運動は連続しているからであり、それが常に「乱雑」な結果につながっているとすると、情報の決定性はまさしく雲の流れのように、不確定要素の「塊」の中に存在してしまうからだ。

 「情報」は、その塊の中に於いて無法的に自由な動きを取れるようになり、かえってそれが、「1つの状態の決定」に対して大きな弊害を生むことになる。

 具体的には、サイコロの目が1となるか6となるかの中間に連続している「確率」こそ、「時間」とその「距離」の『場』ということになり、私たちが存在している「現在」は、「確率の変動幅そのもの」になると考えた。

 「確率の変動幅」とは、“雲の流れが常に同じ状態を維持できない”のと同じで、サイコロの目が1にもなるし、6にもなれるタイミングであり、不確定状態を、“常に連続している状態になる”というものだ。
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