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【第7章】須磨と海
第437話
しおりを挟む「…確認やけど、ほんまにタイムリープしとるんか?」
彼は恐る恐る尋ねてきた。
幽霊を見る時のような目で。
「してるよ」
そう真顔で返すと、「どっから来たんや?」と、聞いてきた。
すぐにその言葉に返せなかったのは、正直、よくわからなかったからだ。
「自分」がどこから来たのか。
記憶を辿れば、すぐに思い出せる。
手を伸ばせば、すぐそこにある。
考えなくたってわかることだ。
自分が「どこにいたか」なんて。
でも、すぐにはわからなかった。
奇妙な感覚だった。
母さんや父さんのこと。
「お姉ちゃん」と呼ぶ梨紗の声。
真隣にあるはずの日常が、なぜか遠くに感じる。
「今日」がいつか。
昨日が「どこ」か。
朝、交差点にいた。
学校に行く途中だった。
赤色の信号機と、人気の無い路地。
急いでた。
学校に遅れちゃいけないと思い。
須磨駅から7時45分の電車に乗って、長田駅まで15分の道のり。
始まったばかりの高校生活。
その日々が、すぐ隣にあるのを思い出せた。
朝のチャイムと、ホームルーム。
私がいる1年7組は、校舎別館の一階にある。
30人程の賑やかなクラス。
担任の先生は、ワケあり美人の理科の鈴木。
教室に入ると、いつも、見慣れたクラスメイトの顔ぶれが並んだ。
おしゃべり上手な高杉に、ナス顔のゆず。
口数が少なく、毒舌家かつ掴み所のない東さおり。
「なのだ」の語尾が口癖で、実家が牧場のツヨシ。
インターネットとパソコンの区別ができない超絶天然っ子のヒロミ。
ロングストレートヘアの、ミステリアスな美少女、今井知香。
頭がよく、言葉遣いが丁寧だが、麺類を食べる時の吸引力が凄まじいダイソン。
他にもたくさんいる。
紹介しきれないほど、特徴的な子が。
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