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明日への道

第419話

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 わかるよ、気持ちは。

 私も翔君から告白された時は、胃の中のものが全部外に出てしまいそうなほど、気持ち悪くなった。

 好きな人から告白されると、現実の居所がわからなくなる。

 思考が止まって、制御が利かなくなる。

 嬉しいを通り越して、世界が反転するんだ。

 なにが起こってるかを、捕まえることができずに。


 キーちゃんの場合は、ちょっと違った。

 そもそも、亮平のことを異性としては見ていなかった。

 友達。

 相棒。

 男とか女とか、そういうことじゃなく。


 でも正直、意識の変化があったのは事実だった。

 自分にも好きな人ができて、ラインのやりとりとか、学校での会話とか、恋ってこういうことかって、少しずつわかるようになってきた時期に、いつの間にか大人になってる彼が、隣にいた。

 クラスメイトに亮平のことを聞かれて、付き合ったことあんの?とかって聞かれるのは、冗談にもならないことだった。

 アイツとはただの幼馴染。

 そんな関係じゃない!、って、真顔になる。

 ただ、そういうことを聞かれるたびに、大人になった彼の姿が、視界の中に飛び込んできた。

 そうだ。

 アイツも男なんだって、考えてしまうようになった。

 それがいつからだったかは、よく覚えていないけれど。


 ま、でも感覚としてはよく似てる。

 誰かに告白された時は、相手の声や視線に、思わずドキッとさせられる。

 私は電話だったから、まだマシだった。

 けどキーちゃんは、面と向かってだ。

 バッターボックスに立つ時の真剣な顔。

 キャッチャーミットを構えたときにしか見せない、真っ直ぐな眼差し。

 その中にしかなかったはずの彼の強い気持ちが、“眼差し“が、ヒリヒリした空気の中で走ってきた。

 想像にもなかった言葉が、現実の壁を越えてやって来た。


 「ごめん」


 って、キーちゃんは言おうと思ったんだ。

 ラインのメッセージで。

 シャワーを浴びた後。


 私たちはそんな関係じゃないよって、言おうとしてた。

 なんて返せばいいのかも、わからなかったから。

 隣にいることが、当たり前になり過ぎていたから。
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