404 / 698
風の憧憬
第403話
しおりを挟むでも、最後の最後まで戦ってこれたのは、ストレートのサインを出す、彼がいたからだった。
“ここに来い“
ミットの下で出す、グーのポーズ。
いつもそうだった。
首を振っても、サインを変えない。
“信じろ“
って、ただまっすぐ見つめてきてた。
融通の利かない頑固者。
バカって言っても言うことを聞かない。
でも、逆にそれが救いだった。
彼がいなけりゃ、とっくに野球を辞めてた。
諦めそうになったら、いつも、彼の姿が思い浮かんだ。
いつでもバカ正直な、気の利かない声が聞こえた。
きっと、ゴールするために、ストレートを投げていたわけじゃない。
現実の中に流れるスピードの中に、生きていたかった。
逃げたくなかったんだ。
「今」に届くためには、きっと、目の前の現実に立ち向かっていくしかない。
それをわかってた。
言い訳なんてしたくなかった。
自分が女だから、なんて、ただの言い訳だ。
でもそうじゃない。
ボールを握ることに男も女もない。
信じたい心があった。
辿り着きたい「明日」があった。
試合が終わっても、人生は続くんだ。
そのために今、自分ができること。
“下を向いている場合じゃない”
そう思える視線の先に、彼がいた。
18.44mの距離を挟んで。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。


ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる