雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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【第6章】バッテリー

第366話

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 あの日以来、アキラは亮平に興味を持つようになった。

 それは自分にも、真剣になれるものがあったからだった。

 昔から、強くなりたいと思っていた。

 姉を亡くして、家族が壊れた。

 親は離婚し、母親とは喧嘩ばかり。

 頼れるのは自分だけだった。

 剣道を始めたのも、「強さ」を追い求めたかったからだ。

 誰に頼らなくても生きていく。

 そのことばかりを考えて、気がつけば「不良」というレッテルを貼られるようになっていた。

 それでも構わなかった。

 女の子は女の子らしく生きろ。

 そんな小綺麗な言葉が、日常の中に掠めていっても。


 剣道の練習中、彼の姿が思い浮かんだ。

 まっすぐ向かってくるボールに、まっすぐぶつかっていく視線。

 カキーンという、金属音。

 喧嘩は強くないのに、なぜか大きく、逞しく見えた。

 ボコボコにされてた時もそうだ。

 結局最後まで、彼は立ってた。

 あの時、勝つとか負けるとか、そういう「結果」の先に彼はいなかった。

 ただ立って、睨み返してた。

 割り込んで来た時は、あんなにビビってたくせに。


 「アイツ、何者?」

 「なにが?」

 「あんたの隣にいるヤツ」

 「はて」

 「専属キャッチャー」

 「ああ、亮平のこと?」

 「そうそう」


 なんの変哲もない男の子。

 ケツの青いガキ。

 はたから見たらそんな印象だったが、いつの間にか、ただの男子には見えなくなっていた。

 じつはすごいヤツなのか!?

 キーちゃんはそんなことはないと言っていた。

 ただどうしても気になって、クラスの違う彼の教室を、窓越しに見るようになった。

 春先、同じクラスになった二人は、四六時中他愛のない会話をするようになった。

 共通の話題は特になかったが、一緒にいると自然と笑えた。

 いたずらっ子で、お茶目な性格だったアキラは、よく彼にちょっかいを出した。

 彼も負けてはいなかった。

 売店で焼きそばパンを取り合ったり、授業中に消しゴムを投げ合ったり。

 リョウ!

 彼のことをそう呼ぶようになってからは、お互いになんでも話し合えた。
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