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少年とヒーロー
第353話
しおりを挟む小惑星落下の情報も同様に、情報インフラの4次元的通信によってリアルタイムに状況を把握できるネットワーク環境が多元的に整っていたが、それを”自然災害の一部“と捉えられるだけの一般的な対応と内容が、各メディアの報道の中にはなかった。
小惑星の接近に対して具体的な被害の推定と計算が、各デバイスを通じて明確に確認できたのは事実だったが、それに対する対策や対応の余地が、「避難」という行動だけに焦点が当てられていたのも、災害を“災害レベル“として報知する上での障害に繋がっていた。
一般的な報道機能は、地震や台風によって生じる被害の対策を内包しながら、次にどうすれば良いかの行動を未来的に予測する”通信設備“と言い換えることもできる。
しかし今回の報道は、どの程度の被害が推定されるか、及びどのくらいのレベルに相当するものなのかの具体的な試算が「軸」にならないまま、大々的な「避難活動」に視点が当てられていたため、人々は困惑するしかなかった。
そもそも世界規模の自然災害は、単一的な事象としては過去に前例がなく、国際的な連盟を通じて緊急に報道せざるを得ない状況を、各国の主要機関はほとんど想定していなかった。
そのために各メディアで伝えられる内容は、事態の緊急性に対する早急なアナウンスに終始しており、被害の推定に合わせたタイムライン上の対応措置は、想定される未来の行動に対しての実践的な情報の共有を、ほとんど具体的な状態に落とし込むことができずにいた。
リアルタイムで焦点に当てられたのは衝突周辺区域からの脱出であり、それに基づいた対策のほとんどは、避難活動とその現状性だけに注力されていたのである。
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