雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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少年とヒーロー

第348話

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 「もしもし、おかん?」

 「あんたなにしとったんや。電話に出んさいよ」

 「すまんすまん。さっき無線で連絡が入ったんや。えらいことになっとるが」

 「サツキと一緒に大学に来とる。岡山まで連れて行こうかと思ったが、まずはあんたに連絡しようかと思ってな」

 「真波まなみからも聞いたわ。家に電話してくれたんやろ?」

 「あんたが電話に出んからやろ?とりあえずサツキは安全なところにおるから」

 「代わってくれるか?」

 「サツキ、お父さんよ」

 「…もしもし、パパ?」

 「おう、サツキか!いい子にしてるか?1人で婆ちゃん家に行けたんやって?すごいやんか」

 「うん。今は学校にいるんだよ。すごくおっきな」

 「婆ちゃんが一緒におってくれるから離れたらあかんで?今からそっちに行くから」

 「こっちに来るの??」

 「ああ。婆ちゃんに代わってくれるか?」

 「洸平こうへい、あんた仕事はどうするん?」

 「仕事もなにも、組合のもんが渡航を中止しよったんや。町の集会所にはみんな集まっとるし」

 「でも今から来るいうて…、岡山まで行こうか?」

 「ええ、ええ。今はみんな集まった方がええやろ。兄貴と翔太しょうたにも言うといた。2人に連絡は?」

 「したけど、今みんな家におるわ」

 「兄貴にもう一回連絡してみてくれんか?2人は神戸に行くわって言うとったから」

 「わかった。電話してみるわ。和重かずしげさんとこは大丈夫なん?」

 「こっちは大丈夫やと思う。いざとなったら周りに人がおるし、おかんも知っとるやろ?近所の山越《やまごえ》さんが役場の人間やから、緊急時は案内してくれるわ」

 「和重さんにはよう言うといてくれるか?あんたも事故せんようにこっち来んさいよ?急がんでもええから」

 「わかっとるわかっとる」
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