雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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現在の岸辺

第307話

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 これぞまさしく、「自分探しの旅」といったところだろう。

 バスは私たちを乗せて、走りまくった。

 1時間…

 2時間…

 気がつけば、空が赤くなり始めていた。

 記憶の中で、一向にマッチしない景色。

 通ったことがある道なら、せめて何か断片的な映像が蘇るはずだけど、それがないってことは、まだ、その場所を通っていないってことなのかも。

 記憶の中で見たものが、本当に存在してるかどうかも怪しく思えてくる。

 信号機とか電柱とか、塗装の剥げた道。

 街中に過ぎていく景色は、どこかあどけない顔をしてて、それでいてよそよそしい。

 何事もなく過ぎていく時間の中に、穏やかな人の流れ。

 目の前に広がる世界は、どこかで見たことがある。

 と、同時に、なぜか寂しかった。

 どこがと言われたら、答えようがないけど。

 記憶の中で思い出せるもの。

 それは例えば空の色だったり、午後の日差し。

 車が行き交う街の喧騒や、風。

 蝉時雨。


 ここが岡山だろうが神戸だろうが、それは変わらない。

 ずっと近くで思い出せる。

 すれ違う時間の中に。

 まどろむ午後の木漏れ日に。


 でもなぜかここが、自分の知らない世界だとも思えた。

 手を差し伸ばしても届かない。

 そんな気さえした。

 キーちゃんのノートにはこう書かれていた。


 「セカンドキッド」


 そう呼ばれる人たちが、世界に生まれたこと。

 セカンドキッドってなんだよと思っちゃうけど、私もその「1人」なんだって。


 「元々世界に存在していなかった」


 この言葉が、胸に突き刺さる。

 言葉の意味はわかる。

 けど、その「内容」を理解できない。

 「存在してない」ってなに?

 そんなバカなって、思ってしまう。

 だって、ここにこうして存在してるじゃないか!?

 意味がわからない。

 存在してないっていうなら、その証拠は?
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