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この世界のどこかいるキミへ
第262話
しおりを挟む私は、あんたを殺しに行かなければいけない。
「私」は、ITNの職員だが、同時に、ITNの反勢力組織を支援するレジスタンスの一員でもあった。
世界各地で行われていた「人間のデジタル化」への反対運動。
人間の生存をかけた科学研究が各地で盛んに行われていく中で、物質主義的な社会思想を持つ多くの人が、「肉体」と「精神」を切り離すことの懸念を示すようになっていった。
「生存」とは、心臓の鼓動があってこそであり、空気に触れ、地面に足を付けることこそが、人間本来の自然のあり方や、確かな「未来」に繋がっていくのではないかと、考えられたためだ。
デジタル・フロンティアの思想では、人は個人レベルでの肉体を持たないし、「時間」という概念が今までとは異なる次元にあるということ、生活や環境の変化による外的ストレスがなくなるということ、を1つの指針としていた。人間には寿命がなくなり、新しい「命=エネルギー」の在り方を模索できる機会を得られるとされ、最終的には、「人間」という区分さえも取っ払える、″種″を越えた新たな「生」のカテゴリーを打ち立てられるのではないかと、考えられるようになった。
″クラウド上(時間ネットワーク上)″に人間の意識を保存できれば、人間は「死」の恐怖に怯えることなく、過去と未来の間を行き来できる。
まさに人類が理想とする1つの世界が、そこにはあったんだ。
しかし、ITN、すなわちクロノクロスによって開かれた4次元ネットワークは、世界に1つのウソを生んでしまった。
本来起こるべきはずだった出来事が書き換えられ、「運命」は1つではなくなってしまった。
その片割れが、お前なんだ。
楓。
あんたは、世界の「運命」のトリガーだ。
1995年に起きたタイムクラッシュが、全ての始まりだった。
あの日から世界はウソをついた。
決して言い逃れることができない「ウソ」を。
「大坂楓」という人間は、元々どこにも存在していなかったんだ。
阪神淡路大震災で、あんたの父親は死ぬ運命だった。
——大坂友哉。
私の父親である、桐崎雄一朗の友人は。
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