205 / 698
99%の先へ
第204話
しおりを挟む「…どうするつもりやねん」
「…どうする、って?」
「…9月10日の事故、何とかするつもりやないやろな?」
「どう言う意味…?」
「いや、別に。っていうか、俺も楓も、同じようにまた事故を起こすとは限らん。難しく考えないことや。なるようにしかならんのやから」
そりゃ、何とかできるなら何とかしたい。
…でも、方法がわからない。
けど、少なくとも、今この瞬間は、亮平が生きてる。
目を見て、確かめたんだ。
“ここにいる”って。
「…なんや、心配してくれるんやな(笑)」
「当たり前やろ!幼馴染なんやし、知り合いが目の前で事故に遭ったんやで!?」
「…知り合い…か」
「なんやねん、その目は」
「…てっきり、もうちょっとランクが上かと思ったわ」
「…ランク??」
「いや、楓にとって「俺」って……。いや、やっぱなんもない」
なんだコイツ。
言いかけて途中で言わないのって、一番嫌いなんだが。
っていうか、亮平に言いたいことがあるんだった。
忘れようにも忘れられないことがあった。
それを思い出した。
「…アンタ、今すぐに土下座して?」
「え?なんで!?」
「いいから頭を垂れる!」
「…なんやねん急に。嫌や」
「アンタ私にとんでもないことしてくれたよな?」
「え、…いや、身に覚えないけど」
「キス、…アンタ、私にキスしたんやで!?」
「………………ハァ!??」
「いやまあ、アンタに言ってもしょうがないかもしれんけど、「アンタ」がやったことに変わりはないんや。代理人として謝れ」
「いやいやいやいや、待て待て!なんの話やそれ…!」
「…やから、未来に行ったって言うたやろ??その世界でなぜかアンタが横にいて、気がついたらキスしてきたんや!」
「……そんなん知らんがな…。お前の妄想やろそれ…」
「…何が嬉しくて、アンタにキスされる妄想見んとあかんねん!!」
「そもそも、お前の横におったってどうゆうこと!?」
「…いや、やからそれは…」
「はい妄想。お疲れ様でしたー」
ムカッ
なんでコイツの心配をしてるんだろうか私は。
足元にある石ころを拾い、ぶん投げる。
大体アンタがバイクなんかに乗ってるから、事故が起こっちゃったんだ。
高校生なんやから、大人しく学校に行っとけよ。
アンタが真面目に勉強しとけば、こんなことにはならなかったんだ。
くたばれ!
このポンコツッ!
「やめろ…!危ないやろ?!」
「アンタは人に迷惑かけすぎやねん!どんだけ婆ちゃんが心配しとったかわかる!?」
石を投げながら、なぜか泣けてきた。
待合室で、ハンカチと御守りを手に持ちながら、必死に祈ってた婆ちゃんの姿を思い出した。
「どうか無事で…、どうか無事で…」って、何度も何度も言ってた。
手術が終わるまで、一度もその場を離れなかった。
人目も憚らず泣いてた。
どうか助かってほしいって、その声だけが、手術室の前の廊下に響いてたんだ。
…アンタは、あんなに優しい婆ちゃんを泣かした。
重罪なんだよ。
それをちゃんと…、わかってるのか?
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる