雨上がりに僕らは駆けていく Part1

平木明日香

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第204話

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 「…どうするつもりやねん」

 「…どうする、って?」

 「…9月10日の事故、何とかするつもりやないやろな?」

 「どう言う意味…?」

 「いや、別に。っていうか、俺も楓も、同じようにまた事故を起こすとは限らん。難しく考えないことや。なるようにしかならんのやから」


 そりゃ、何とかできるなら何とかしたい。

 …でも、方法がわからない。



 けど、少なくとも、今この瞬間は、亮平が生きてる。

 目を見て、確かめたんだ。

 “ここにいる”って。


 「…なんや、心配してくれるんやな(笑)」

 「当たり前やろ!幼馴染なんやし、知り合いが目の前で事故に遭ったんやで!?」

 「…知り合い…か」

 「なんやねん、その目は」

 「…てっきり、もうちょっとランクが上かと思ったわ」

 「…ランク??」

 「いや、楓にとって「俺」って……。いや、やっぱなんもない」


 なんだコイツ。

 言いかけて途中で言わないのって、一番嫌いなんだが。



 っていうか、亮平に言いたいことがあるんだった。

 忘れようにも忘れられないことがあった。

 それを思い出した。


 「…アンタ、今すぐに土下座して?」

 「え?なんで!?」

 「いいからこうべを垂れる!」

 「…なんやねん急に。嫌や」

 「アンタ私にとんでもないことしてくれたよな?」

 「え、…いや、身に覚えないけど」

 「キス、…アンタ、私にキスしたんやで!?」


 「………………ハァ!??」


 「いやまあ、アンタに言ってもしょうがないかもしれんけど、「アンタ」がやったことに変わりはないんや。代理人として謝れ」

 「いやいやいやいや、待て待て!なんの話やそれ…!」

 「…やから、未来に行ったって言うたやろ??その世界でなぜかアンタが横にいて、気がついたらキスしてきたんや!」

 「……そんなん知らんがな…。お前の妄想やろそれ…」

 「…何が嬉しくて、アンタにキスされる妄想見んとあかんねん!!」

 「そもそも、お前の横におったってどうゆうこと!?」

 「…いや、やからそれは…」

 「はい妄想。お疲れ様でしたー」


 ムカッ


 なんでコイツの心配をしてるんだろうか私は。

 足元にある石ころを拾い、ぶん投げる。

 大体アンタがバイクなんかに乗ってるから、事故が起こっちゃったんだ。

 高校生なんやから、大人しく学校に行っとけよ。

 アンタが真面目に勉強しとけば、こんなことにはならなかったんだ。


 くたばれ!

 このポンコツッ!


 「やめろ…!危ないやろ?!」

 「アンタは人に迷惑かけすぎやねん!どんだけ婆ちゃんが心配しとったかわかる!?」


 石を投げながら、なぜか泣けてきた。

 待合室で、ハンカチと御守りを手に持ちながら、必死に祈ってた婆ちゃんの姿を思い出した。

 「どうか無事で…、どうか無事で…」って、何度も何度も言ってた。

 手術が終わるまで、一度もその場を離れなかった。

 人目も憚らず泣いてた。

 どうか助かってほしいって、その声だけが、手術室の前の廊下に響いてたんだ。


 …アンタは、あんなに優しい婆ちゃんを泣かした。

 重罪なんだよ。


 それをちゃんと…、わかってるのか?
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